空の蒼さを 見つめていると

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21th Century 週記 Art Cinema Comics Novel Word 小野不由美 
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2000年8月

8/28

 夏休み最終日。



 朝、目を覚ましてとりあえず、宿の温泉にもう一度。果たして、昨日以上に熱く、僅かな時間しか入っていられなかったが、流石に目は覚めた(笑)

 帰る前に饅頭屋街を歩き、少なくとも4個は試供品の食べ比べをし、一番美味しかったお店の物を土産に買う。元祖でも本家でもなく、製造元本舗なる意味不明の肩書きの店だった。

 帰りは、地元駅から上野まで特急なので、気楽。1時半には上野に着いてしまう。せっかくなので?秋葉原に寄って、(多分、この先1回しか使わないと思われる)CDplayerを来月に備えて買い、ついでに「NieA_7」の弐だけ買って帰る。

 行きの荷物はそんなに重くなかったのに、帰り、秋葉原でうろいている時、荷物がえらく重くて難儀する。その差は饅頭だけ、の筈なので思っていた以上に、饅頭重い、ということなのだろうか。まぁ、計48個ともなれば、それは確かに結構な重さになるのかも。



 今回は、温泉町の旅情を味わう、というのがテーマで、それゆえわざわざ和風旅館に泊まったりもしたのだが、しかし、リラックスするという観点からはむしろ、近代的なホテルの方が良いかもしれない、という感想も持った。難しいものだ。次回、草津に行くなら、間違いなくホテル。というか、草津は一度はおいで、とはいうものの、二度は行かなくても良いような気も。

 ともあれ、かくて一泊二日の小旅行は幕を閉じ、かすかな余韻を残して、日々は再び日常へと還元される。

 

8/27

 夏休み五日目。突発的に加えられた、草津行きの日



 草津というのは、群馬の山奥。というわけで、とりあえず上越新幹線で高崎まで。そこからは鈍行に乗り換え。

 ちなみにスキーとかに興味がない私にとって上越新幹線に乗るのは初めてで、ホームに停まっているMAXを見て、おおっデカいと今頃、感心したりしたのだが、実際に乗ったのは、その後に発車の、製造20年前のような車体のものだったので、その余りの落差に少しばかりやるせない気分に陥いる私だった。



 高崎と言えば、新幹線で東京から50分、各駅停車だと2時間弱の所にある都市なのだが、その周辺の駅で噂の?「ジユキ」キャンペーンポスターを発見して感動する。

 「ジユキ」とは、東京自由切符の略で、実は私も時々使っているのだが、都心から、これくらいの距離の地方都市の女子中高生にターゲットを絞ったポスターらしく、中に書かれた「はじめてのTOKYOでもヘイキ」みたいなコピーが泣かせる。アニメ絵系で、今風の女の子3人を描いたイラストも適度に垢抜けていないあたりが、趣旨にも合っていたのだけど、対象者の中高生にとってはどう映っていたんでしょうか、この絵。



 4時頃、草津に着く。まずは町外れの西の河原公園の露天風呂へ。ここは広いのが特徴で、どれくらいかというと、面堂家の風呂ぐらい広い。という例えももはや古過ぎ? で、その広さと開放感を充分に堪能したのだが、実は私はまだその時、草津の温泉の本当の恐ろしさを良く理解していなかった… などと思わせぶりな言葉を配置しつつ、書き進むというのもたまにはいいかもしれない。

 街の中心にある湯畑と呼ばれる場所と西の河原公園の間は、温泉饅頭屋が立ち並ぶ街並みで、浴衣姿の観光客が下駄の音を鳴らせながらそぞろ歩くというのは、やはりそれなりに風情が有るものだ。などと月並みなことを考え、そういえば、「そぞろ歩く」というのも、こういう時以外ほとんど使わない語彙だなと、更にどうでも良いことをぼーっと考えたりする。無為な時間の使い方、これこそが温泉町での有るべき姿というものであろう。



 旅館は昨日急遽、電話した中で予約が取れたここ。和風旅館ということで、据え膳上げ膳、とりあえず一通り全部出た、という感じの夕食。まあまあ美味しゅうございました。とは思うものの、海辺の町に住んでいる者としては、山奥で刺身は要らないだろとも思うわけで、こういう日本料理の海の物、山の物、という定型に出会う度に、そういう定型を守り続けることの意味を色々考えてしまう。



 夕食も済んだので、また湯畑へ。湯気がもうもうと立ちこめる、リドリー・スコットな夜景を眺めた後、横の白幡湯という共同浴場に入ってみる。

 ちなみに草津には、湯船と着替え場のみの、こういう共同浴場が20近くあって、全てが無料なのだそうだ。二つの湯船の内の、一つの湯にさわってみると、…っ!熱いなんてもんじゃない。45度は有る!最近、ぬるま湯に浸かってばかりいた私には到底足を踏み入れることの出来ない熱さ。そう、草津の温泉は源泉のみ。薄める水なんて存在しない。…そういや、草津の湯揉みって、熱い温泉を冷ますためのものだったような。夕方入った西の河原温泉は、表面積が広いので普通の温度まで自然と冷めていただけだったのだ。

 では、どうやって入るかというとそれは(他人の)忍耐である(笑)。つまり、人が入ると少し温度が下がる、その繰り返し。というわけで、もう一つの湯は入れる温度になっていた。でも熱い。



 しかし、宿の温泉は、隣の地蔵湯というところから引いているのだが、入る人も限られているため、当然ながら熱く、入るのに更に難航を極めた。

 部屋に戻って、人類と入浴の歴史についての本を読んでから、寝るが、流石に体が熱くて(笑) なかなか眠れず(^^;

 

8/26

 夏休み四日目。休息日。



 準備をするのが面倒で、どうしようかと逡巡していたが、結局、明日は草津温泉行き一泊二日ツアー敢行を決定!

 イスラム教徒にとってメッカ巡礼が一生の中で一回は果たさねばならない使命であるように、少なくとも温泉好きを自称する以上、草津という所は一度は行かねばならない聖地であろう。草津良いとこ一度はおいで。と古人の言葉にもあるくらいだし。

 などと、訳の分からぬ理屈をこねている様はまるで、どこかの温泉好き漫画家の強引な行動パターンと瓜二つのような。まあ、たまには良いでしょ、温泉地の和風旅館で、ぼーっと一夜を過ごすというのも。何せ、社会人になってからは、ちゃんとした宿に個人的な旅で泊まった記憶が無い、というか要は、旅をしたこと自体がない状態なので。

 

Comics イラ姫「最終シスター四方木田」1巻 集英社

 マンガというのは、記号によって構成される、言うまでもなく半ば抽象的なメディアなわけで、抽象的な思考であるとか、抽象的な世界に対して親和性が高い、のではないかと前から思っているのだが、この作品などはそれを実証してくれる良い例という気がする。つまり、感情レベルではなく、思考実験としての世界そのものを楽しんでいる、というような。それを哲学的と呼ぶかどうかは読む人の自由ではあるが。

 というわけで、いつも以上にクリアな意識(知覚?)で、淡々と楽しみたい一冊。月光で照らし出される世界の透明さ?

 …それにしても。こういう「シベリア寒気団」だったら、それは見てみたいよなぁ。

 

8/25

 夏休み三日目。



 今日は「さくや 妖怪伝」を観に行くのだ。と普通に朝早く起きた筈なのだが、こちらのHPの日記で紹介されていた熱いページを読み耽っていたら、あっと言う間に、昼近く。昼食にカップ麺を食べ…たりはしないでそのまま出掛ける。



 せっかく渋谷まで出たので、最近、個人的には定番のBook 1stに寄り、まずは「さくや」のノベライズを回収。で、たまには人文系の専門書でも読もうかとフロアーを移し、「どれどれ最近のハーバーマスは…」などと、かつての専門分野近辺の本を探していたはずが、いつの間にやら民俗学のコーナー、しかも入浴について書かれた本の棚を眺めているのに気が付く←それしか関心が無いんかい(^^;

 日頃、もっと知的好奇心に溢れた生活を送っていれば、キーとなる関心事は幾らでも有る筈なのに、と我ながら少しばかり悲しくなるが、でもまぁ、疑問は一つずつ片付けなきゃね、とあっけなく気持ちを切り替えて、この前の疑問の調査に乗り出す私。



 そう、銭湯における関東と関西の違いの原因。で、結論なのだが、どうやら、関東と関西では入浴の文化が違うことにあるらしい。歴史的には、関西の入浴は風呂屋=蒸し風呂中心で、関東の入浴は湯屋、という違いがあるのだという。と言え、そう単純なものではないようなのだが。この辺の推移は、とりあえず買ってきた、松平誠入浴の解体新書」辺りを読んで整理出来たら、また報告の予定。

 さらに楽しみなのは吉田集而風呂とエクスタシー」という本。入浴の文化人類学、との副題の通り、目次には「アメリカ大陸の風呂」や「ユーラシア西部の風呂」といった具体例と、風呂の分布と分類、そして風呂の意味といった考察がなされているらしい。人類にとって風呂とは、入浴とは何なのか。その壮大な?疑問に答えてくれる(と思われる)本ではないか。まさに、探していた一冊である(笑) これも読後、報告予定。乞、ご期待!



 などと前振りで盛り上がってしまったが、本日はあくまで「さくや」が目的。夕方5時の回に入ると、ガラガラな館内。しかし、映画の興行収入を気にするより前に、私にはやるべきことが。というわけで、フロントにポスターが欲しいというと、村正を収めた箱のようなものをガラスケースから出してくる。ポスターの値札も既になく、まるで寿司屋の裏メニューのようだ、と思う。2千円という、「映画本体より高い」価格もまさに時価。しかし、このためにだけ劇場まで来たようなものだし、1万円のデラックス版の画集を買ってからは、もはや恐い物などない、ような。…それにしても、冬目景のファンであるということは、茨の道?

 

Cinema 原口智生さくや 妖怪伝

 どうせ今の時代に作るんだったら、もっとハードな世界観でやってくれたら傑作になったのにとか思わないでもないのだが、子供向け映画の範疇としては傑作であることは正しくないのかもしれず、これはこれで良いのか? とはいえ、本来はもっと明快なテンポを持たせることが可能だった筈。最終決戦までに必要な道のりと試練を最初に明確にしておくことで。その辺、まだまだ脚本の熟成度が甘いというか。

 私は大映特撮とは馴染みがない人間なので、記憶の扉はそんなに開かなかったですが、人によっては懐かしさ溢れるのかも。そうそう、建物の向こう、空一杯に女の顔が広がっている場面は、「ゆきおんな」?とか思いましたが。てそれは大映特撮、違う。

 気合いを入れて行くと脱力せずにはいられない作品だけれど、何も考えずにただ映画として観れば、それなりに楽しめるラインは維持しているのでは。少なくとも、ヒロインさくやを演じる安藤希の横顔の表情は決まっているので、凛とした少女が好きな人にはお勧め。

 

8/24

 夏休み二日目。



 日帰り旅行という名の、ささやかな現実逃避。小田原で降り、箱根へと向かう。最初の目的地は箱根園の箱根プリンスホテル。の露天風呂(笑)

 ログハウス風の屋根しか遮る物がない、開放感溢れる風呂のすぐ目前に芦ノ湖が広がる、という涼しげなこの湯には前から入ってみたいと思っていたのだ。湯は蛸川温泉から引いてきており、カルシウム硫酸塩泉との表示。無色透明無臭で柔らかな当たりのお湯と、湖から吹いてくるそよ風が心地よく、一時間近くも足だけお湯に浸けたまま、ぼーっとしていた。流石に平日の昼に利用する人は少なく、入っていた時間のほとんどを一人で堪能。外来(病院みたいな言い方だ)の料金は1500円。ちょっと高い気もするが、それだけの満足は得たのは確か。



 船で元箱根に。日本画の美術館が出来ているとのことで。成川美術館という所。戦後の日本画の有名どころ(いわゆる五山とか)を集めており、中でも山本丘人のコレクションが目玉、とのことに少し期待していたのだが、特別展の岡伸孝展が中心で他の展示はほとんど無かった。この岡信孝は、川端龍子の孫に当たる人らしいが、初めて見た結果としては、凡庸な作家という以上の存在ではなかった。多分、いい人なんだろうけど、きつい言い方をすれば、見た側から忘れていくような絵画ばかり。入場料1200円の大半は展望室からの眺めだと思うことにする。



 また船で(といっても今度は海賊船)桃源台へ。海賊船と言うことでか、アナウンスが二人のキャラクターの掛け合いで、少年役の方の声に対して、あっ田中真弓!と思ってしまう私は駄目かも。でも相手の少女役までは分からなかったので多分、大丈夫だ(笑) ちなみに「ONE PIECE」らしい。



 バスに乗り換え、仙石原へ。南甫園。ここは大湧谷から引いた露天風呂で、白濁したいわゆる温泉。硫黄分が多いのはもちろんだが、口に掛かったお湯は鉄分の味が強かった。成分表を見ると、カルシウム・マグネシウム・ナトリウム硫酸塩泉とのことで、色々(笑)なイオンが含まれていて、入っていて結構来ました。PHを見ると2.6! 弱酸性ビ○レなんて目じゃない「強酸性」なんだけど、温泉なら、それでも良いのか? 値段は1000円。



 というわけで、久々に一日の行動をやや詳しく追ってみたけど、要は「箱根で温泉のハシゴをした」、と一言だけ書けば済むような。

 

Comics 雁須磨子「どいつもこいつも」1〜3巻 白泉社

 「花の自衛隊グラフティ」という副題が付いているのだが、どこが「花の」なのかは不明。いや、食虫植物を連想させる人は出てくるけど(^^;

 
このところ、繰り返し読み返している作品。実は、こういうのって凄い好き。周りの何気ない一言で、どん底に突き落とされる人間ほど端から見ていて可笑しいものは有りません。と書くと、誤解招きまくりだとは思いますが。基本は集団コメディー。つまり、学園物のバリエーションなのだけど。そこから外れるところが… う〜む、私のつたない言語能力ではこの作品の魅力を伝えることはちょっと不可能かも。

 ちなみに、彼らの中では、落ち込んで、世間をそねみモードの江口が一番好きだったりするんですが、それってやっぱり、変…?

 

8/23

 夏休み一日目。



 最初の午前の使い方はデジキャラットという、ダメダメな充実した休日。それにしても、映画「無法松の一生」なんてネタ、誰も付いてこないと思うぞ。午後は……はっ、思いっ切り昼寝倒してしまった。何か夏休み中、こうして無為に過ごしてしまう嫌な予感が。で、夕方、メイも初めて見てみたりして、て、やっぱりダメダメじゃん。この際、アニひなまで見てしまうかも。



 せっかく休みなので、HPの隅の方を整理したりしているのだが、疲れるので進まず。合間に昨日まとめて買ってきた「OURs LITE」と「サンデーGX」と「ウルトラジャンプ」を読んだりする。その辺の感想を書けば、少しは漫画系サイトらしい気もするのだが、夏休みなので?その辺は割愛。

 一つだけ。

 「サンデーGX」の陽気婢の「インベーション・ボーイズライフ」(前号との前後編)での、少年/少女である存在への憧憬が窺えるラストには、変わっていないなと感動させられた。「11人いる」みたいな短編を描いていた頃からすると10年くらい、一貫したテーマを追い続けているわけで。

 「サンデーGX」は、まだ中心となる作品が見えない、試行錯誤中の感が強いのだけど、今月の吉崎観音、来月からのえのあきら等、私の好みを狙い撃ちしている(笑)ようなラインナップを揃えつつあるので、今後に期待。特に、今月からの伊藤明弘の作品が早く暴走りだすことを期待。

 …結局、何だか書いてしまっているけど、まぁ、いいか。

 

Novel 乙一石ノ目 集英社

 期待に違わぬ出来。帯にはホラー短編集と謳われているが、ファンタジーと言う方が正しい。童話風の作品もあり、鏡花的な怪異譚もあり、とそれぞれ違った語り口で語られる四篇の少しばかり不思議な物語を収めている。平易な文章で、基になるアイデア自体も特別、独創的というわけでもないのだが、申し分のない読後感。舞台となる世界の伝え方が上手いというか。

 どれも良かったのだが、個人的には「はじめ」という短編が一番印象的だった。小説というメディアが創造出来る(架空の)キャラクターと読者との関係を想起させるという点で、これは間違いなく優れたファンタジーだが、そんな余計なことを考えずとも、とにかく「はじめ」という人物の魅力が切なく伝わってくる佳作。泣ける作品と言っていいかも。

 中身とは全然関係ない話だが、私の買った新書の帯は何故か二重になっていて、上の帯の下からもう一枚スルスル出てきた時はやや驚愕した。

 

8/19

 来週「夏休み」を取るために、朝から仕事。とはいえ、途中には昼寝したり、アールグレイで午後のお茶をしたり、そこそこは平穏無事な夏の土曜。会社でないと完結しないものが多いため、「夏休み」を充分に取れるかどうかは未だ予断を許さないが。予定では火曜から、…は無理かな。

 

Book 貴田庄小津安二郎の食卓 芳賀書店

 ここのところ毎日、楽しみながら少しずつ読んでいた本。小津の映画の細部の豊かさを、画面にそして会話に登場する食べ物を通して語った本で、読んでいて小津の映画の様々なシーンが蘇る。

 彼の映画は大体どれもよく似ているので、ともすれば1本見ればどれも同じとか、初期の試行錯誤を経て、後期に完成されたとか、その作品を余り観ていない人は思い勝ちだが、決してそうではなく、開かれた鏡とでも言えば良いのか、お互いがお互いを参照しつつ、しかもどれもが新たな表情を見せ、そして更に外へと広がっている… 何度観ても、全てのセリフを覚えても、尽きることのない魅力がそこにある。

 ところで小津の映画での食べ物といえば、私にとっては何と言っても「麦秋」で、杉村春子のセリフに登場するアンパンほど感動的な食べ物はない 、と思っているのだが、著者も最終章を「麦秋」に割き、このアンパンのシーンを初めとして、場面毎の食べ物を紹介している。

 こういうものを読んでいると、猛然と小津の映画を観返したくなってくる。「麦秋」もそうだが、特に戦前のサイレント映画の数々が。松竹は早く、小津のDVD全集を作ってくれないものだろうか。というか、某国営的放送局、BSで一度位、戦前の小津特集をすべきでは?

 ちなみに、この本には小津の「グルメ手帖」なる、美味しい店の備忘録?や、戦時中の日記の一節(食べたい物が列挙されている(^^;)も収録されていて、本人の食に対する色々な嗜好も分かって面白い。戦争という極限状態で小津を支えた重要な一つが食欲だったようだ。

 アンパンについては、この著者の指摘に驚き。確かに、そういえば、そのバリエーションと言えるような気はする。

 

8/18

 Swimming Baby。

 この前、NHKのドキュメンタリーの再放送番組を何気なしに付けたら、画面全体に満たされた水の中をスイスイと泳いでいく赤ちゃんの映像が。

 実は人間の赤ん坊は生後6ヶ月までは、水中では自動的に肺の入り口が閉じて水が入らなくなるそうで、息継ぎさせれば、水中を泳げるのだという。人間は(本当は持っていた)イルカのように水の中で生きていく可能性を捨てることで、陸上で成長していくわけだ。「人」となる上で失っていったもの…

 

Novel 森博嗣まどろみ消去 講談社文庫

 森博嗣は、文庫落ちしたものは一応読んでいるのだが、実はかなり違和感を感じる作家だったりする。もっとも私は多分、本当の意味でのミステリ好き、ではないし、森ミステリィが好きというわけでも更にないので、感じて当然なのかもしれないが。だから、「最も森博嗣らしさが感じられる」らしい、この短編集が全然ピンと来ないのも仕方ない、のか。(私の)ストライクゾーンの中をボールが通っていないのだ。でも、これがストライクな人もいるわけなのだろうし… アメリカンジョークを聞かされて、一応その意味も分かるけど、笑えない時の疎外感?

 じゃあ、何で読んでいるかというと、その違和感がそれなりに興味深いのと、あとは単に「萌え小説」(?)としてだけ。

 

Tea レピシエ 504「ROOIBOS NATURAL」(ルイボスティー・ナチュラル)

 「鮮やかな赤い水色、甘くやさしい香りと味わい。カフェインレスでタンニンもごくわずかと、ヘルシーです」

 あの、こいずみまりの「若奥様とセールスマン」の彼も奥さんに売ろうとしていた一品(笑) 名前はよく聞くけど、実際の広まり方はどうなんだろう? ちなみに私はこれが初体験。

 茶葉が、細くてどこか樹に付く小さな毛虫を思い出させて嫌〜んな感じだと個人的には思ったので、ちゃんと茶こしを使用した上で飲むのがよろしかろうと。色は確かに真っ赤。味は紅茶以外のものとしては意外なほどまろやかで甘いので、そう変なものではないかも。…でも、どうせ飲むなら、紅茶飲んだ方が美味しいのは言わずもがな。紅茶以外のお茶なら、マテ茶などは割と好きですけど。

 

Tea レピシエ 858「BLUEBERRY」(ブルーベリー)

 「ブルーベリーの実と葉で香りづけした紅茶です。心安らぐ高原の香りをお楽しみ下さい」

 分かり易い、味と香り。昔はブルーベリーといえば、例えば軽井沢の農園のジャムとか、確かに高原のイメージがあったような気もするけど、今では毎朝、ヨーグルトにアオハタのジャムを付けて食べていたりして、すっかり日常に埋没している印象が。いや、それは単に私の朝食のメニューの話に過ぎないんですけど。そんなわけで余りにも予想通りというか。新鮮な感動を得るにはこの際、高原に行って飲むとか(笑)努力も必要なのかも。

 

8/13

 にあ・あんだーせぶんなDVDを見る。漫画以上に、何でも有りな作品?

 ところで、有名な話だけど、関東の銭湯は浴槽が奥の壁の前に有るので、だから背景に富士山とかが描かれているけど、関西の銭湯は真ん中に浴槽があるので、壁絵自体が存在しないのが通常だったことを思い出す。違う理由もどこかで読んだような気がするのだが… 何でだったかな?

 

Novel 中島敦中島敦全集1巻 ちくま文庫

 中島敦といえば、高校の現国で「山月記」を読まされるため、大体、誰でも知っている作家の一人だと思う。しかし、何だか漢字が詰まっていて難解そう、という印象に加え、「李徴は何故虎になったのか」だとか碌でもない設問を出されたりした挙げ句、謹厳実直で難解な作家というイメージと、人に苦労を掛けた迷惑な作家だという悪印象だけが残っている、というのが大半の人の記憶ではないだろうか。

 中島敦の作品を一通り読んでみた人が、だから、まず驚くのがその取り上げている世界の広さだ。そして、その多様な中島敦の作品の中でも、特に抜きん出ているのが、「光と風と夢」という作品。これは、あの「宝島」を書いたスティーブンソンが晩年移り住んだサモアでの生活を、いわば日記風に記したものなのだが、スティーブンソンが乗り移ったかの如く、生き生きと述べられるその「日記」は、凡そ日本文学のイメージとは隔絶している。

 池澤夏樹(の南方への指向に辺り、最も重要な先達となったのは多分中島敦だ)がかつて述べていたように、中島敦の作品の特色、知性を基礎とした文学というのは、戦前の日本では完全に孤立していたし、今でも充分に評価されているとは言い難い。空前絶後?

 ともあれ、私は数年に一度、この「光と風と夢」や彼自身の南洋での日記(彼が、当時の占領地域の郵便局員として赴任するのは「光と風と夢」を書いた後)を読み返したくなる。というか、その爽やかな生き方を確かめたくなるのだ。自分には一生真似が出来ないにせよ。

 

Tea レピシエ 819「NEPUTUNE」(ネプチューン)

 「エキゾチックなフルーツの香りに、ほんのり甘いはちみつの香りをブレンド。テイエの自信作です」

 これも何か黄色いピールが入ってます。飲むと、確かにはちみつ的な甘い香りが。いわゆる、フランス紅茶らしい、フレーバードティー。中年の奥様方主体のアフタヌーンティーのパーティーにでも出せば、受けそうな気も。少なくとも、甘いお菓子は必須かと。私的には、それほど惹かれず。

 

8/12

 暑い、だるい。

 というわけで、体を休める方向にしか、最近関心が向かわない私。今日はタイ式マッサージを初体験してみた。足中心にじっくり2時間弱のマッサージ(とアクロバティックな体の伸ばし)。とてつもなく気持ち良いというほどでは無かったけど、さすがに体は軽くなった、気はする。

 足をマッサージされていた時に「石のようです、というか木?」と言われてしまったのはともかく、手のひらと甲のマッサージの時にまで「硬い」と言われたのにはショック。そうか、手まで硬いのか… 肌の色は白くて羨ましいとも言われたけど。行ったのは池袋のBUAというお店。



 本屋で「バーズ」を立ち読み。最近の「バーズ」は買いたいとまで思わないので。で、「さくや」な映画についての冬目景のインタビュー記事を読んでいたら、劇場限定で冬目景のポスターを売っているとか。古き大映テイスト漂う特撮ぽいので、ビデオで見れば充分かと思っていたのだが、ううむ、やはり映画館まで行かねばならないのか。

 そういえば、今月、冬目景のピンナップが付く雑誌があったような。「少年エース」だっけ?(後記。「エースネクスト」の方だった)

 

Novel 倉田英之R.O.D 集英社スーパーダッシュ文庫

 設定のバカさと内容の無さが、ちょうど良い感じ。私も外出時には文庫本が1冊無いと不安なタチなので、本屋を買い占めてしまう位、本好きなヒロインにも、割と親近感が。ちなみに、この本を買ったのは、書泉ブックマートではないけど、書泉グランデだった。

 

Novel 上遠野浩平冥王と獣のダンス 電撃文庫

 この前の「殺竜事件 」は伝え聞く評判がイマイチだったので買わなかったのだが、こちらは、文庫だし、読んでみることに。

 かつての機械文明の遺産を独占することで世界の半分を支配し続ける陣営と、奇跡使いと呼ばれる超能力者の能力を武器にもう半分を治める陣営との果てしない戦い。という設定の下、数人の男女の運命的な出会いと戦いを描く、というのが、大体の内容。

 で、その設定をプロローグで説明するのは仕方ないとは思うのだが。「外宇宙に潜んでいた謎の超存在が人類に襲いかかった 」などという文章を読まされると… そのままページを閉じて本を投げ捨てたい衝動に耐えるのに苦労する。

 そういえば、タイトルもこの設定から取られているのだが、文学的修辞(ここでは、勿体ぶって分かりにくく表現するの意)にしかなってないような気が。本編でも、登場人物の思考がまるっきり現代日本と変わらない、というのが気になるし。言うなれば、この手のライトノベルに有り勝ちな、駄目なところが、目白押し。

 というわけで、登場人物の間で繰り広げられる、ベタなラブコメしか読むところがないような作品なのだが、しかし、その限りでは充分に楽しめたので、まぁ良いかと。いわゆる、キャラ萌え小説。

 ところで、独立愚連隊といえば、思わず口ずさんでしまう「イー、リャン、サン、スー」のメロディ、てそれはフランキー堺

 

Comics こがわみさき「魅惑のビーム」 エニックス

 前のが長くなったのでごく簡単に。

 かんそう。読んで、心が洗われました。いじょう。

 

Book 加門七海/豊嶋泰國「京都異界紀行」 原書房

 京都という都市を風水や陰陽道、怨念といったMagicalな観点から分析する、という種類の本には、もはや食傷気味、を通り越して、いい加減うんざり、という気すらするのだが、これは水という視点から語ったもの、ということで、新しい発見があるのではと期待して目を通す。

 結論的に言えば、考えるヒント、くらいにはなったかと。近所に住んでいた者からすれば、上賀茂神社をそんなに重要だと思っていなかった反面、下鴨神社の「水」は、あの、夏の祓えでのノスタルジアな祭りを思えば、少なくとも同じくらい重要なのではとか、色々思ったりした。

 ところで、対談パートは割と刺激的な指摘もあり、面白かったが、加門七海の紀行文パートは、いささか過剰な思い入れが入り過ぎ。

 

8/6

 BSで、琵琶湖疎水を大津から蹴上までボートに乗って中継するという企画をやっていたので、(仕事しながら)ずっと見てしまう。レポーターは越前屋俵太。ちなみに、山科から蹴上までは私も一度、桜の季節に歩いてみたことがある。近所にあれば、絶好の散歩道だと思った。



 ……あ、書くのをすっかり忘れていたが、明日から1週間、その BSでは、最近の野田秀樹 の上演作品をまとめて5作品、昼の12:15から放送する。一つ一つは再放送らしいが、しばらくアンテナ無しだった私としては、全て保存マスター要作成。

 8/7「キル」〜3:15。8/8「贋作・罪と罰」〜2:30。8/9「TABOO」〜2:45。8/10「半神」〜2:30。8/11「パンドラの鐘」〜2:30。最終日の「パンドラの鐘」が野田演出版ではなくて、蜷川演出版なのが残念だけど(野田のファンの人によれば、差が有り過ぎとのことなので)。この中で、一番楽しみなのは8/10の「半神」。夢の遊民社時代の「半神」と、このNODA MAP版の「半神」(主演は深津絵里)ではどう変わっているのだろう。興味津々。

 毎日、テープを換えるのを忘れないようにしなければ。そして後は、この時間帯に地震が少ないことを祈るばかり(^^;

 

Tea レピシエ 836「GRENADE」(グレナダ)

 「カリブ海のフルーツのブレンド。トロピカルなグアバの香りをベースに、パパイヤ果肉をたっぷりと加えました」

 中に入っている黄色とオレンジのピール(小片)がそれぞれパパイヤとグアバ? それと謎の、紫色の花の蕾が入っている(^^; 味は、爽やかな柑橘系。華やかな感じで。トロピカルと言われれば、トロピカルのような。カリブ海と言われれば、カリブ海のような。行ったこと無いけど。

 

Tea レピシエ 701「EARL GREY OP」(アールグレイ・オレンジペコ)

 「セイロンのオレンジペコをベースにしたアールグレイ。ホットではもちろん、アイスティにしても美味です」

 実は50種類の中の一つではなくて、久しぶりにアールグレイが飲みたくなって別に買ったもの。ちなみにこの店、アールグレイだけで5種類もあったのだが。一番爽やかな香りだったのが、これ。ベースがセイロン茶だから、非常に飲みやすい味のアールグレイ。この夏は、これを飲む予定。

 

8/5

 今日は仕事関係の用事が、と思っていたら急にキャンセルになったので、思案した挙げ句に、志穂さんも出るという小野坂昌也コントライブ「アコガレルキモチ」を見に行くことに。いや、志穂さん+コントという組み合わせなら、行くしかないでしょ。

 内容は、核戦争の危機迫る中、シェルターに避難した男達が、「人造人間キャ○ャーン」ならぬ「急造人間マサーン」(^^;という往年の人気アニメを巡って、熱き会話を繰り広げる、と少し違う気もするが、大体そんな感じの話で、全編、ディープな笑いに満ちていて、結構楽しめた。

 志穂さんも出番が少ないながら、回想シーンで、演技の下手くそな新人声優役を楽しそうに演じていたし。

 

Novel 野尻抱介ピニェルの振り子 ソノラマ文庫

 前に「ジュールベルヌをもう一度」という個人的な夢について書いたことがあるが、それにはこうすれば良かったのか、と唸らされる傑作。恒星間航行が可能な、いわば、もう一つの19世紀文明世界で繰り広げられる、冒険物語。もちろん、野尻抱介であるからには、物語全体を支える世界(特に、生物)の設定はまさにSFならではの壮大さ。

 いつもの野尻作品でお馴染みの、けなげなヒロインとはうって変わって?哀れな主人公の少年にもあくまで素っ気ない今回の少女だが、これはこれで大いに良し(笑) ていうか、無駄口を叩かないヒロインというのは個人的にはかなりツボだったり。草薙琢仁のイラストもグー。

 ところで、この作品、「銀河博物誌」というシリーズ名が付けられている。ということは次巻以降でも宇宙各地の珍しい生物を求めて、「ヴァカンティ伯爵とゆかいな仲間たち」の交易船が縦横無尽に駆けめぐる物語が展開される、のでしょうか。え、「ゆかい」なのは伯爵だけ?

 

Novel 阿部和重インディヴィジュアル・プロジェクション 新潮文庫

 一人称小説の本質、といっても自己言及の不可能性などと大袈裟なことを言うつもりは無いが、語られることの真偽がいつも宙吊りされることを活用して、というよりそれ自体を目的としている作品、とでも言えば良いか。内容的には、カルト教団的な小コミュニティーの誕生と崩壊の歴史でもあり、暴力と策謀の物語でもあり、何よりも青春小説でもある。のは良いのだが、何だろう、この既読感は。村上龍

 

 ライブを見た後、いつもの方々とホール近所のアジアンカフェで辛いものを食べて帰ったのだが、食べている時は別に良かったのだが、帰る途中、電車の中でいきなり燃え返し?というか、胃が熱くなってかなり辛かったです。まさに、胸焼け。