空の蒼さを 見つめていると

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21th Century 週記 Art Cinema Comics Novel Word 小野不由美 
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2000年2月

2/27

Novel 京極夏彦どすこい(仮) 集英社

 ようやく読了。「繰り返しはギャグの基本です」とばかりに関西系お笑いのノリで延々と繰り広げられる、まぬけな設定と会話の数々。逆に段々とウロボロスに展開していく物語構造。これって、凄いんだか凄くないんだか、真面目なのか単なる冗談なのか、どっちやねん!と椎塚有美子(あるいは猫塚、弓塚、遅塚…)ならずとも、ツッコミを入れてしまいたくなるような「怪作」。

 後半の方が調子に乗っている感じ。勿論、「脂鬼」には楽しませて頂きました(^^; 『腹は───脂肪で包囲されている。』だもの。

 …とかなんとか言ってないで、現実逃避からそろそろ抜け出さなくては。

 

2/26

 そんなわけで、睡眠不足解消のため、早く寝ようと思っている土曜の夜。

 会社からの帰りでは普通の本屋?しか行けないので、「さんま」などは当然手元にはなく。遠藤浩輝「EDEN」4巻とか中平正彦「破壊魔定光」1巻とかその程度。ちなみに、両方もその作画と演出のレベルは高いと思うけど、あんまり私の趣味では無いんだよな…(といいつつ、一応買っている)

 

Novel 江國香織「ホリー・ガーデン」 新潮文庫

 痛い小説。一時、読み進めるのが辛くて、中断していた位。しかし、それだけに登場人物の 精神的なリアリティという意味では文庫になっている江國作品では現状、極右。「きらきらひかる」が綿菓子のように思える。

 最初の取っつきにくさとは裏腹に、読み終える頃には非常に好きになった作品だが、とはいえ、ヒロインの気持ち が自分のことのように良く分かると熱を持って話すような女性には、出来れば会いたくない(^^;;



 ところで、物語上重要な意味を持って登場する、「青い薔薇の柄の紅茶茶碗」といえば、言うまでもなく、 「宮内庁御用達」だった、大倉陶園のティーカップのことだろう。昔、ある陶磁器屋さんに聞いた話によれば、 大倉陶園の陶器は非常に高い温度で焼かれているので、その堅さはボーンチャイナのブランド (ウェッジウッドとか)物の比じゃないらしい。

 そんなわけで、私も下宿をしていた頃から今に至るまで、朝食の紅茶はいつも、大倉陶園のモーニングカップ (白の無地の方)に入れて飲んでいる。使い初めてからもう10年以上経っているのだが、私の場合、 それにまつわる重要な話というのは特に無い…

 

Novel 西澤保彦「人格転移の殺人」 講談社文庫

 何を今さら、ではあるが、非常に面白い。とはいえ、何が面白いのかは 実はよく分からない(^^; …物語全体がいかがわしいところ?

 

 そういえばタイムリーに4/2の葉書が。…「親父だらけの水泳大会2000(仮)」という、 想像するだけで凄く嫌、なタイトル、これ何?

 

2/25

 今週は、土曜になったら寝倒す、というか、干しワカメを水で戻すが如く、頭と体を睡眠で満たすことだけをささやかな唯一の目標として、何とか過ごしてきたのだが、でも今週もまた土曜出勤となってしまい、結構、投げ遣りな気分に陥っている金曜の夜。



 勿論、日曜は、いつものように(T T)、仕事だし、今晩も他の晩と同じく仕事、ってそれは即ち、仕事がエンドレスで続いていくということだよな…

 4/2についての事態が急変して、「可能」になったことだけが、今週のgood newsかも。 明日はせめて夜には、帰ってきたら、さっさと寝ようかと思っている、ので、今週は(も?)余り更新出来そうにない。

 

2/20

 いろいろ有って、というか要は時間がないので、今日はリンクのみ更新。

 それと先程気付いたのですが、実は今まで「倉多江美」のことをずっと「倉田江美」と書いていました(汗  最初の記述からすると2年以上、その間一度も指摘がなかったというのは、やはり誰も読んでいないんだろうな、倉多江美…

 

2/19

 とある縁で古本、というか中古マンガ探訪の古書店巡りに参加させて頂く。私の知らない世界、というか、昔の少女マンガについての造詣が深い方ばかりだったのだが、逆に、一番気になる漫画家として冬目景の名を挙げた時に、その場の誰も知らなかったのには驚く。確かに、今の少女マンガにおいて冬目景と同じようなポジションにいる作家がどういう人なのか私には全然分からないし、そういうものなのかもしれない。



 その古書店巡りを含めて、今日入手した本/Comics。当然ながら、中古の方が多いです。

 Comics。紫堂恭子「エンジェリック・ゲーム」1,2巻榛野なな恵「ピーチパイ・デイズ」、倉多江美「エスの解放」川原由美子「25時のシンデレラ」(以上中古)。赤松健「ラブひな」6巻橋口隆志「ウインドミル」7巻川原泉「新 本日のお言葉」「ウルトラジャンプ」3月号

 本。竹内薫+SANAMI「シュレディンガーの哲学する猫」(中古)、西澤保彦「人格転移の殺人」加納朋子「魔法飛行」

 この中では、何と言っても祝!「魔法飛行」文庫化。内容はに書いた通り。文庫版(創元推理文庫)は前作「ななつのこ」に続いて、作品のイメージを上手く伝える素敵な表紙になっているので、これでより一層、加納朋子が普通の人にも読まれるようになれば、と思う。

 なお、この続編をe-NOVELSで今春から連載するとかいう話を「このミス」で本人が確か書いていたので、始まるのを心待ちにしているのだが…

 

 江國香織「ホリー・ガーデン」の感想もまだ書いていないが、とりあえずこちらから。

Novel 牧野修「王の眠る丘」 ハヤカワ文庫

 これってやっぱり、巨神兵? というわけで、作者が「ナウシカ」好きらしいのが、とりあえずよく分かるファンタジー小説(^^;  費用対効果という点では、充分に元が取れるだけの面白さが有るのは間違いない。が、 (悪く言えば)表面から見えるところだけを塗った世界という気もし、感動させるまでにはいかない。 この後の牧野を早く読んでみないと。

 ラストは、手塚治虫が好んで繰り返し描いたような展開だけど、 ちょっと物足りないか…

 

2/18

 社会人になってから自分が「付いていた」時期などというのはついぞ思い出せないのだが、それでもいつも以上に「運の悪い」時期というのは確かにあって、今現在も何回目かのそれに当たる。昔の少年マンガの登場人物でいえば「ちょっとヨロシク」の花田君状態(←古い)。



 「運の悪い」というのは、自分の意志ではどうしようもない「不幸」が続く、ということであり、何が起きても半ば諦め気分の今週だった。不幸に慣れている、というか。でも、例えば上司からいきなり、今度のゴルフはこの日だと安いから4/2で案内を作って置けと言われたりすると、改めてその運の悪さを実感する。なんでまたその日? 幹事である以上、さぼるわけにはいかないし。ちなみに4/2が何の日かは、必要な方は既に知っているので特に書かない。

 実感したからといって勿論どうにもならない(乗った電車は相変わらず人身事故で止まる)が、ともあれ、こうしてまた、この行事が更に嫌いになったことだけは確か。

 

2/13

 仕事の合間を縫って、現実逃避。今週買ったものの一部へのコメントなど。



Comics わかつきめぐみ「ローズ・ガーデン」 講談社

 女子高生の幼なじみ3人組のそれぞれの恋を巡るささやかな騒動を描いた連作「ローズ・ガーデン」。読んでいて、この世界ってエリック・ロメールの映画みたいだと思う。特に今回ならば「友達の恋人」。何というか、見終わった時の幸福感というのが、非常に近いです。

 物語の中で、主人公達が自分の本当の気持ち(orやりたいこと)に気付いて、それを口にする。というのも、 共通しているし。

 

Book 「ポポロクロイス物語」(TV Animation Offical Fun Book) ソニー・マガジンズ

 実はゲームをやっていなかったりする。更に、アニメも見たのは、この本によると 6話〜16話だけらしい。う、全然見てないじゃん(^^; 17話以降はビデオに録ったまま、なんだけど。 そういう人間が言うのもあれだが、アニメの「ポポロクロイス物語」って、地味だけど本当に良い作品だったと思う。

 何と言っても、ほのぼの&ファンタジーな世界設定にも関わらず、ヒュウちゃんのためなら 光学迷彩付き!なメカまで作ってしまう、ガミガミ魔王が素敵(^^;  まさに、男のロマーン!

 …あ、済みません、今、ちょっと付きました。ガミガミ魔王はもちろん好きだけど、やはりこのアニメは、ヒュウさまの、素直になれない純情、それしかないです(爆) 後藤隆幸の丸っこい3等身キャラクターデザインのいわば頂点というべきキャラクター。

 何か、久々にオタッキーな方向で暴走しているな、私。

 いや、そういう層にも応えつつ(笑)、話としては毎回、きっちり真面目に感動させる、というところが 「良い作品」のゆえんなわけで。暇を見付けて、早く残りを見ることにしよう。

 

2/12

 仕事もしておかないと…なのだが、みず谷なおき原画展は義務な気がするので、行くことに。ついでに気になっていた展覧会を見に上野へ。

 

Art 「モナ・リザ100の微笑展」 東京都美術館

 恥ずかしいタイトルだが、「モナ・リザ」を模写/引用した100の作品を並べてみるという、まるで「ギャラリー・フェイク」でフジタがやってみせそうな企画展。

 美術史においては、以前述べた「バベルの塔」のように、それ以降その作品が絶対の基準、オリジナルとなっている作品が幾つも存在するわけだが、「モナ・リザ」こそは、その中でも「名画」中の「名画」の代名詞と言って良い。

 しかし、それだけに真っ白な状態で「モナ・リザ」を見ることが出来る人間などもういない。学生の頃、ルーブルでガラス越しの「モナ・リザ」を眺めていた私は、見れば見るほど、名画だから名画に見えるというトートロジーに陥いるばかりだった。私が見ているのは、「モナ・リザ」という「絵」?それとも、頭の中に有る「モナ・リザ」という「観念」?



 従って今回も、見る前はオリジナル(今回は当然来ていない)と散乱するコピーのようなイメージで捉えていて、「本物と偽物の区別くらい付きます!」みたいな、三田村女史ごっこ??のような展覧会なのかと思っていたが、主催者の意図はもう少し違っていて、現代美術における「モナ・リザ」というモチーフの展開と拡散の歴史、だった(むしろ「高田美術館」的な企画?)。



 「オリジナリティ」が疑問視されていく現代美術の過程の中で、皮肉にも「モナ・リザ」という「オリジナル」なイコンが活用されていく歴史。



 20世紀の現在、そんなにも「モナ・リザ」が価値有る象徴か?とも思うのだが、作品の一つ(「モナ・リザ」の格好をしたモデルがしょうもないショート・ギャグ?をひたすら繰り広げる、「吉本100連発」みたいな(笑)ビデオ)の余りの脱力振りに思わず全部のネタを見て、割と楽しんでしまったような私だって、「モナ・リザ」の呪縛からは決して自由ではないのかもしれない。

 もっとも「モナ・リザ」が現代美術においてそれだけ引用された背景には、既存の「価値」の象徴というだけではなく、普遍的な人物像であるがゆえに、性差という点で複合的な存在であったことも大きかったらしい。つまり、髭を生やしたデュシャンの行為以降、「モナ・リザ」は女/男である、現代的な存在として「復活」したわけだ。



 展覧会の最後は消えゆく「モナ・リザ」として、「概念だけが残りながら、画像は既に無い」作品群。ブラシとバケツと雑巾が置かれていて、ブラシに「ジョコンダは階段にいます」とメモが掛けられている「作品」のように。

 かくして20世紀は「モナ・リザ」を消費し終えた。といえばハッピーエンドなのだが、どこぞの週刊美術雑誌の創刊号の表紙が「モナ・リザ」であるように、「モナ・リザ」を巡る、オリジナルとコピーの物語は次なる世紀にもまだ終わりそうにない。

 

Comics 「みず谷なおき追悼原画展」 ギャラリーくぼた

 上の文章がやけに長くなったので(^^;、こちらについては、行って良かった、とだけ。どちらも同じ1時間掛けて見たんですけど。

 ともあれ、話に聞く通りの「綺麗な原画」でした。今後、遺稿集を眺めつつ、彼が残していったもの、永遠に失われてしまったものを考えていくことになると思います。

 

2/11

 何とか、この一週間も耐える。とはいえ、今週も、目覚まし時計との戦い、じゃなくて睡魔との戦いには敗北していた様子。同じこと(苦笑)を書いてもくどいだけなので、今週はもう書きませんが。



 今日は、そんなわけで、久々に外出&買い物。なので色々書くことも有るのだけど、大昔の映画レポートの続きを書いていたら、時間配分を間違えて(笑)、現在のことを書く余裕が無くなってしまった。ちなみに、今回分は内容薄いです。

 そんなわけで、とりあえず買ったものリスト(含む今週分)だけ。あと二日の時間の余裕次第では補完予定。というか、したいのだけど。

 コミックス。押井守×藤原カムイ「犬狼伝説 完結編」わかつきめぐみ「ローズ・ガーデン」鬼頭莫宏「なるたる」4巻いしいひさいち「地底人の逆襲」浦沢直樹「20世紀少年」。小説。上遠野浩平「エンブリオ炎上」牧野修「王の眠る丘」。その他。「映画千夜一夜」(文庫版)上・下明石散人「アカシック ファイル」現代詩文庫「尾形亀之助詩集」、「ポポロクロイス物語」(Official Fun book)、「アフタヌーン増刊」



 とりあえずは「ローズ・ガーデン」を堪能。

 ところで、明日は東京まで足を延ばしてみず谷なおき原画展&何かを見に行くか、思案中… そろそろ仕事もしないといけないし…

 

2/5

 目覚まし時計を買った結果がどうなったか(笑)は、続きを見ていただくとして、「状況」は全然、終了していない、というか(T T) 今日は、本社の講堂で講習。いや、社員に無料で知識を向上する機会を提供しようという会社の姿勢自体は良いと思うし、参加するのも悪くはない、とは思います。

 但し、それは、へろへろな睡眠不足では無かったり、金曜の夜に両手に持ちきれないほどの仕事を持ち帰ったりしていなければ、の話だけど… とはいえ、某試験をすっぽかしたばかりでもあり、この手の半強制イベントをこれ以上さぼるわけにもいかず。仕方ないので、午前の講義の間中は、持ち込んだ仕事をひたすら内職(笑) て、受験前の中高生か、私は(^^;;; なお、午後は、ほぼずっと意識を失っていたのは言うまでもない。



 せっかく東京まで出たので、本屋へ。普及版の貞本義行画集や、宇河弘樹の短編集を買ったくらいだけど。京極夏彦の新刊「どすこい(仮)」も買いたかったのだが、今は読む時間もないので、見送り。収録作品の中で、京極夏場所による「脂鬼」だけは早く読みたいのだけど(^^;;;



 本屋と言えば、今週あった、駸々堂の倒産のニュースはかつて京都で暮らしていた者にとって、かなりショック。ジュンクが出来る前、大きな本屋といえば、まずは駸々堂だったからなぁ。今にして思えば、当時から既に大赤字だったらしいが…

 あと、せめてもの、癒しを求めて?ドラッグストアで温泉風入浴剤の詰め合わせを買う(笑) その結果もいつか報告予定。

 

Novel 江國香織「落下する夕方」角川文庫

 恋愛が出来ない者達の物語。しかし、同時に普通のカップルの話以上に、切ない恋愛小説。 というまとめ方は陳腐過ぎ? 元恋人の今の恋人である華子と「わたし」の奇妙な共同生活。 一言で言えば、華子というキャラの魅力がほとんど全て、な作品。

 解説を読んで初めて知ったのだが、映画化された話らしい。「きらきらひかる」松岡錠司が映画化していたし、江國香織の作品は、映画作家に映画化意欲を掻き立てるのかもしれない。しかし、「バタアシ金魚」をあんなに見事に映画化した松岡錠司による「きらきらひかる」には 当時、余り好意的な批評が無かったことは覚えている。実際の映画は未見なので、 実は傑作なのかもしれないが。

 

 この作品を読んでも分かる通り、江國香織の作品は単純な「癒し」を描いた作品ではない (それだけに読後感も重層的に積み重なっていく)のだが、今の私は、(以前に書いた言い方で言えば) 「カフカ的」というか、もっとひねくれているのも事実。

 より正確に言えば、他者の「存在」を精神的に/物理的に毀損することでもなければ、 おそらくクリアに回復され得ないような精神状況。もちろん、そんなことは出来るはずもなく、 またするつもりもないので、きっとその分、自分の精神と肉体は少しずつ壊れて行っているんだろうな…という。



 だから現在は、例えば友成純一の小説だって、「愉しく」読めちゃうような気がしている(^^;