空の蒼さを 見つめていると


2003年9月

9/30

 「デヴィッド・コパフィールド」は2巻目に入ったら、もの凄く面白くなってきました。さすが、当時のベストセラー作家。

 

Art バラの宮廷画家 ルドゥーテ展  Bunkamura 2003.9.13〜2003.10.19

 バラの花にも絵にも、私は正直言って余り興味ないのだが、年会費を払っているので、せっかくならということで。

 ボタニカルアートといえば、今年の初めに見た川原慶賀の絵には深く感動したのだが、ルドゥーテの絵には、そういう品格は感じないなぁ。丁寧には描いてあるのだけど、魚でいえば目が死んでいるというか、対象を(アミニズム的に)敬う心情が感じられないというか、要するに、生物の姿として真に迫ってこないのですよね、どうも。

 ただし、流石に後半のバラ図譜だけは、その花の姿をあますところなく残すことへの異様な熱意を感じさせ、見応えはあった。

 とかいいつつも、ロサ・カニナやロサ・フェティダの絵はあるけど、何故、ロサ・ギガンティアやロサ・キネンシスが無いのだろうという疑問の方が、頭の中を占めていた私。

 

 その疑問は会場出口で、簡単なバラの歴史を眺めて、大体、判明した(ので、帰ってもう一度、調べてみた。→その一例)。

 バラの歴史は、1867年に作られた「ラ・フランス」という花の登場を境にして、それ以前がオールドローズ、それ以降がモダンローズと大きく2つに分けられる。で、ルドゥーテのバラ図譜は、ジョゼフィーヌのマルメゾン庭園で育てられていた花を描いていったもの。時代的にはオールドローズだが、方向的にはモダンローズに繋がる(マルメゾンで働いていた者の後継者によって人工交配が進められ、モダンローズが作られていく)当時のバラ作り最先端の華麗なるビジュアルレポートという感じ。

 一方、ロサ・ギガンティアやロサ・キネンシスは、元々の原種。それらが交配される(ロサ・ギガンティアから花弁が尖った性質を、ロサ・キネンシスから四季咲きの性質を受け継ぐ)ことで、モダンローズが完成するわけだが、当時のマルメゾンでは関心が低かったのか、そもそも樹がなかったのか、アルバやガリカといったヨーロッパのバラ(の新種)ばかりがバラ図譜を占めている。両者が、交配される親の系統として改めて脚光を浴びる前の時期の図譜だから、というのが恐らく、疑問の答えなわけだ。

 ところで、ロサ・ギガンティアが「大きい花」であるのは当然として、ロサ・キネンシスの意味が前から気になっていたのだが、Rosa chinensisという綴りはむしろロサ・シネンシスと読んだ方が適当で、その名の通り、Chinese、シナの意だった。そう、両者とも中国産のバラで、それとヨーロッパ産のバラの良いところを掛け合わせたのがモダンローズ、ということらしい。

 ちなみに、ロサ・カニーナはヨーロッパ産、ロサ・フェティダは西アジア産らしい(フェティダとはfaith、「誠実」辺りと関係有る言葉かと勝手に思い込んでいたが、実際は「香り」、というより「匂い」という言葉から来ているらしい。悪臭、とまではいかなくても「匂いの強烈な」バラという感じ? イメージ的にはかなりがっかり だ)。

 それにしても。白薔薇さまや紅薔薇さまが元々、中国の出身だったとは知らなかったアル。

 

 といった話題を、この展覧会から連想するのは私くらいだろうと、思っていたら、似たような人は他にもいたという… (読書日記 9/17)

 

9/28

 最終回の前で止まっているビデオとかが色々溜まっていて、なかなか消化出来ない。とか言っている間に新番組も始まるわけだし。

 

 最近、NHKの新日曜美術館は自分が関わっている展覧会だけ、やけに会期早々から取り上げて、動員のテコ入れを図っているのではないか、という気がしてならないのだけど、邪推だろうか。

 それはともかく、先週の池田遙邨の特集は良かった(旅先のホテルでわざわざ見た)。特に晩年の絵に関しては、そのとぼけ加減が、日本の画家の中で、私が最も好きな画家の一人と言っても良いくらいなので。

 首都圏で展覧会が?と期待したのだけど、倉敷なのか… まぁ、池田遙邨位ならいずれ近所でも回顧展をやると思うので、それを待てば良いか。

 今日の「レンブラント派」展は、紹介されたのが「この作品は展示されていません」という字幕が付く絵ばかりで、何だか微妙(大体、向こうで見てきた絵ではあったけど)。美術館員?の幸福照という 人の名前のインパクトだけが頭に残った。

 

 何だか最近、ここの話題がめっきり絵画方面に集中してしまっているような。もう少しバランスを取りたい気はする。…とりあえずは、もう少し本を読めよ、というだけのこと ? とはいえ、現在読んでいる「デヴィッド・コパフィールド」もいつ読み終えるか分からないし(まだ1巻しか読んでない)。

 あと、(私しか覚えていないと思われる)この夏の旅行記関連は一応、これで終了。残っているのは昨年のトルコか。あれは13日間も有るから…

 

9/27

 後輩から突然、今から始まる椎名林檎のコンサートに行かないかと電話が掛かってくる。…私は武道館まで1時間で着くような所には住んでいないのだよ。もう1時間前に連絡してくれ。

 

Art ヤノベケンジMEGALOMANIA  国立国際美術館 2003.8.2〜2003.9.23

 今回、関西・四国に行った要因の一つとしては、この展示が非常に気になっていた、というのもある。

 大阪万博を原体験としそこからの偏差に拘り続ける(1965年生まれの)ヤノベンケンジとは生まれた年も地域も違う私は、あの万博には記憶も思い入れも全くない。仮に架空のイベントだったとしても何の支障もない位、私にとってはリアリティが無いのだ。

 むしろその後のオイルショックの方が原体験といえる私には、そうして前向きの「未来」を最初に刷り込まれた世代の当惑は正直、よく分からない。しかし、それだけに、こういう形で今もそれに向き合っている姿は興味深く感じていて、一度実際に見てみたいとは思っていたのだ。

 

 放射線を20回?カウントしたスタンダが立ち上がり、次にデメが座り込む(水面に蒸気を上げて顔を付ける)という、多分会場で一番派手な場面も実際に見られたので、満足。

 といった、会場に展示された作品もさることながら、横で上映されていたドキュメンタリー映像が非常に面白かった。

 太陽の塔は元々、生命の進化を過去・現在・未来という形で表す塔で、万博開催当時は「未来」の展示へ左手から出られたが、今は「出口」はふさがれてしまっている。しかし、万博当時、塔に立て籠もる事件を起こして「目玉男」と呼ばれた男がいたことをヤノベケンジは思い出し、あれはもう一つの「出口」だったのではないか、と北海道にいるらしいその人に実際に話を聞きに行く。

 ようやく巡り会えたその人物との会話も面白いのだが(今なお「現役」というか、当時から思想が全然変わっていない人なのだ)、その後、自分の目で直接、その場所から眺めることを決意したヤノベンケンジが、以前は途中で断念した塔内部の梯子を昇って、今度はアトムスーツで目玉の所まで到達する様を見せるのがドキュメンタリーの後半。

 太陽の塔の目玉の所まで行ってみせることで、喪われてしまったもう一つの未来への「出口」というヴィジョンを「再現」する試み。梅図かずおの「私は真吾」のクライマックスに登場する 東京タワーでの「333から飛び移れ」というメッセージと同じ位、感動的な話ではないですか。

 残念ながら展覧会自体は既に終わっているけれど、ヤノベケンジ本人のサイトでのAtom Suit ProjectやMegalomania内の展覧会予告編と終了予告編等を見れば、感じは分かって貰えるのではないかと。

 

Art クリムト 1900年ウィーンの美神展  兵庫県立近代美術館 2003.6.28〜2003.9.21

 ここまで来たならば、ということで寄ったのだが、行った日が最終日。ぐちゃぐちゃな混雑を覚悟していたが、そこまで酷くはなかった。まぁ、普通の人は行くなら既に行ってるか。

 勿論、目的は、現地で見損ねた「エミーリエ・フレーゲ」ただ1点。

 と大騒ぎしていて、実際は余り大したこと無かったらどうしようと秘かに恐れていたのだが、それだけの甲斐はある絵だったので、一安心。この展覧会の中では最も華がある作品だったと言って良いのでは? もう少し空いている場所で、離れて、静かに見たかった。

 というか、ベルヴェデーレ全面協力、というから「接吻」とかも当然来ているものだとばかり思っていたのだけど…

 「ベートーベン・フリーズ」の複製部屋は良く出来ている、とは思うけど、やはり、どうも違和感が。複製の良し悪し以前に、部屋の空気を再現するのは難しいということかも。

 「エミーリエ・フレーゲ」だけで私的には(1500円のバカ高い入場料でも)納得なのだけど、志が余り高い展覧会とは思えず。お金持ちの女性達に受けて、儲かればそれでOKという感じ。通俗的なクリムトのイメージをなぞるだけ。いや、まぁ、クリムトとは本質的にそういう(お金持ちの女性に受けた)画家だったと言われれば、そうなのかもしれないが。

 こういう展覧会を見て「綺麗ね」「良かったわねぇ」とか口々に言い合うおばさん達とはお近付きになりたくない(向こうからもお断りだろうが)。

 

Art 若冲現る!  金刀比羅宮(社務所1階ロビー) 2003.9.13〜2003.11.3

 この旅に出たメインの動機。とはいえ、これだけのためなら旅行まではしなかったとは思うけど。

 派手なタイトルの割には地味な展示。襖4面がガラスケース越しに置いてあるだけだし。若冲の描いた奥書院の「花卉図」は今まで一般に公開されていなかったので、初公開!と銘打っているわけだが、来年秋には奥書院全体を公開する予定らしいので、本当はその時期に行くのが賢明。 とはいえ、来年の自分なんて分からないし、行ける時に行くが吉ということで。

 今回の売りは(多分、その時には近くには寄れない)襖絵を割と間近で見ることが出来ること。というわけで、近くで見たところ。…思ったより傷んでいる。同時期に若冲が描いた他の部屋の絵は、80年後には既に損傷がひどくなって撤去されてしまったらしいから、今もこれだけ色が残っているとむしろ感動すべきなのかもしれないが、間近で見ると結構辛いものがあるのは確か。

 一番良いのは4面が一度に見られる距離で華やかさを楽しむこと。…それって結局、奥書院全体で見た方が良いということでは(^^;;

 とはいえ、目の前には4面しかないので、細部をつらつら眺める。一見、写実的だが、どれも横長のデザインにするために結構、デフォルメ掛けているなとか(向日葵ですら横長だ)。季節毎に配置しているようだが、置き方は割と適当なのではとか(赤い花の配置とかそれほど深く考えた様子でもないし)。花図鑑と見るのが妥当な感じ。

 ところで花の部屋といえば、トプカプ宮殿のハーレムの中に似たような部屋があった記憶が。こういうアイデアは洋の東西を問わず? ただし、あっちは花瓶の花が描いてあるんだったっけ?

 

Art 円山応挙 障壁画  金刀比羅宮 表書院 (常設)

 正直言って物足りなかった前者を十二分に埋め合わせてくれたのが、こちら表書院。

 入る時に大阪の「応挙展」に襖4面だけ出展してますけど良いですか?と訊かれる。そんなことは全然問題でないほど応挙尽くしの書院なのに。informed consent? 中でも、さすが応挙、と舌を巻いたのが、滝の絵。床の間(といっても大名用の部屋だから襖4面分ある)一杯の横長の構図を利用して右奥から左側に描かれている滝の流れ。右隣の面にもはみだすように流れていて、しかも欄間で上が隠れているという空間配置から、非常に立体的な奥行きが感じられるようになっている。

 純粋な芸術と言うよりは秀逸なアトラクションという趣きだが、それを支える描写力は応挙ならでは。これを見るだけでも、金刀比羅宮まで来て良かったとつくづく思った。それなのに、お参りに来た人のほとんどはここを素通りなのが何とも勿体ない感じ。帰る時、書院の人が大阪の「応挙展」は数日で数万人入ったらしいとか驚きを込めて話していたけれど、確かに大阪でそれだけ人が押し寄せるなら、その百分の一は少なくともここに来ないと可笑しいような。

 

 ……全然、進まないなぁ。旅行の写真はこちらからどうぞ。

 購入したばかりのG4wideで撮ったので、全体に(意味もなく)広角。遠景描写がアレと言われるG4wideですが、割と圧縮を掛けたので、実際はもう少し綺麗に写っている(時もある) かと。近景とマクロは非常に楽しいので、私としては年内はとりあえず、これでOK。

 

9/25

 橘いずみが歌う最新作、ALEXANDRA「CIRCUS ANIMAL DESERTION」を購入。全然聞いたこともないユニット名だが、それもその筈、「モンテクリスト伯」という舞台の音楽を制作するために結成したユニットらしく、今回購入したのも、いわば、その芝居のサントラらしい(そんなわけで、店頭では全然見掛けないのでネットで注文した)。

 注目なのは、サウンドプロデュースが須藤晃ということ。デビュー以来、橘いずみの音楽にプロデューサー須藤晃の存在は非常に大きかっただけに、久々のコンビ復活ということで、興味津々で聴いてみたのだが、思った以上に、懐かしい。あの、言葉を乱れ撃ちするような歌詞。中でも「ICECREAM EMPEROR」なんて曲は(「トマトケチャップ皇帝」みたいな名前だ)、昔の曲、例えば「ピストル」等と似たような勢いに、ついニヤニヤしてしまう。かつての橘いずみのファンならば、(芝居自体はともかく)聴いて損はないアルバム。

 最後にボーナストラックとして、芝居の台詞のさわり(といっても17分有る)が収録されているのだが、結構、「痛い」作品ではないかという予感が… でも、目の前で、橘いずみが喋って歌えば、私的にはOKなので、それでも観に行く予定。

 

 ネットで注文といえば、先程、小津安二郎作品集の第一集が届いたのだけど、開封は早くても週末。とりあえず、特典ディスク内のヴェンダースのインタビューでも見ようかと。

 

9/23

 旅行から戻ってきたら、何だか肌寒いのに、びっくり。「Forget-me-not」が無事に発売されているらしいのにも、びっくり。

 

 どこに行ってきたかというと。

 1日目は吹田の国立国際美術館での「ヤノベケンジ ―MEGALOMANIA―」と神戸の兵庫県立美術館での「クリムト 1900年ウィーンの美神展」を見て神戸泊、2日目は四国に渡って金比羅さんの「若沖現る!」展と表書院の応挙を見て(ついでに奥社までの1365段を往復して)、松山 の道後温泉泊、3日目はそのまま松山観光という日程。

 今回の旅行記を書くつもりは特に無いけれど、簡単な印象くらいは、あとで書いておこうかと。ただし、写真をアルバムにしてコメントでも付ければ、それで済む気も…

 ともあれ、四国という島に足を踏み入れたのは、実は生まれて初めてだったので、今回の旅行で少しだけ経験値が上がった気分(といいつつ、北側だけ)。あと、やはり温泉は良いなぁと。この2日間で夕、朝、昼と3回も入ったお陰で、今現在の私の肌は、ツルツルのスベスベ(^^;;

 Novel。夏目漱石「坊っちゃん」。この機会に再読。中学1年以来? 感想は…旅行の話と一緒に書いた方が良いかも。

 

9/20

 今後数日は、関東でうだうだしているよりも、関西以西に行った方が天気が良さそうなので、予定通り、明日の朝から出掛けることに。といいつつ、何の準備も未だしていない私。

 雨なので、一日中、部屋で谷山浩子の新譜「宇宙の子供」を聴きながら、すごく大雑把に旅行の予定を立てていた(温泉には入ろう、とか)。谷山浩子は超安定というか、恐ろしい位に相変わらずだけど、雨の日に聴くと、心が落ち着く(^^;; 何だか、駄目人間確定な気がする休日の過ごし方ですが。

 そんな中、聴いていて思わず苦笑してしまったのは「意味なしアリス」という歌の後半。

 「ダメだ全然意味がないアリス 何をやっているのかわからない まるで全然意味がないアリス 意味がないアリスがそこにいる」

 ……わ、私のこと?

 

 今年前半は、何かを観に出掛ける機会が少なかったので、後半はもう少し積極的に街に出ようと決意(←暑さが引いて、出掛ける気力が出てきただけ)。というわけで、色々とチェック中。

 とりあえず、映画関係をメモ。

 まずは何といっても、小津安二郎生誕百年記念。といいつつ、DVDで順次、全部観直す予定なので、イベント的には特にないかな… DVDには他社分は含まれないので、その辺はフィルムセンターで観直した方が良いのか。あとは、誕生日に開催予定のシンポジウムが要注意 ?

 余裕が有れば、カール・ドライヤー特集に(出来ることなら)全作品、通い詰めて、映画 への距離感をもう一度掴み直したいところ。

 最後に自分への業務連絡。東京国際映画祭での「Ten Minutes Older」の上映(特にヴィクトル・エリセ監督作の含まれている方)を見逃さないこと!

 ……こういう「予定」って、私もどこかにまとめておいた方が良いような気がしてきた。でも、別ページにすると、自分でもどうせその後、見ないしなぁ。

 

 谷山浩子といえば、来月の予定にコンサートを一つ入れました。実は、直接聴いたことは、未だ無かったりするので。

 

9/19

 本日発売のRICOHのCaplio G4 wide、購入してしまいました。

 先々月以来(笑)、新しいデジカメを早急に確保しなければ、と思っていた矢先に、待望の28mm相当のコンパクトデジカメが、ついに出てしまったので、迷うことなく(というか、現状、他に選択の余地は全くない)。まだ何も撮ってないけど、操作性はかなり良い感じ。28mmと1cmマクロの2点だけで、3万(実売価格)の価値はあるのではないかと。

 というわけで、この連休(私的には)は、G4 wideを色々試す意味でも、旅行に行く気満々で、帰宅したところ。……台風って何? 関西と四国に行くつもりなのに、直撃な気配では? もしかして、万博公園付近に私が行こうとすると必ず大雨が降るとか?(そんなことはない )

 せっかく珍しく前向きな気分になったのに(^^;; まぁ、出掛けるとしても、明後日からの話なので、明日の状況を見ながら、もう一度検討かな…(まだ諦めていない)。

 

 何だか急に、ディケンズが読みたくなってきたので、岩波文庫版の「デイヴィッド・コパフィールド」をとりあえず最初の2巻だけ、買ってくる。明快なストーリー、はっきりとした性格付けの人物で構成された「分かり易い」物語が読みたくなった、ということなので、精神的に多分、弱まっているのだろうと思う。要するに、リハビリみたいなもの?

 

9/17

  今度の休みは連休にする予定なので、出来たらどこかへ行きたいなぁ、と思いつつも、今頃そう思っている時点で、もはや駄目な予感。金比羅様まで若冲を見に行くのはどうか、とか思ったりしているのだが、四国は遠いし。

 それについては後で考えるとして。これから年末に掛けて予約すべきもののチェック。まずはケルティック・クリスマスの予約を入れてと。

 

 一昨日の妖精絵画についての補足。何でも「アリス」と関連付けてしまう性向のある私としては、時代も時代だけに、どうしても比較してしまいたくなるところ。

 例えば、同じ「パンチ」誌の挿絵画家として、リチャード・ドイルとジョン・テニエルを(ルイス・キャロルは、「アリス」の挿絵を、テニエルに依頼した際、一旦断られ、ドイルを紹介されたという話があるらしい。結局、ドイルにも断られテニエルに再度頼み込んだ)、あるいは同じく空想癖に満ちたチャールズ・ラトウィッジ・ドジスンの落書きとチャールズ・アルタモンド・ドイル(あ、どちらもチャールズだ)の絵画を。

 もっとも、当時の社会への嫌悪感という点では確かに共通するのだけど、妖精ブーム及び妖精画の方向性が、はっきり後ろ向きだったのに対し、「アリス」は、前向きは嫌だが、後ろ向きもちょっと…という葛藤の中、本来存在しない筈の方角へ何故か跳躍してしまった、というのが、私の抱いているイメージなので、似ているけど少し違う、という印象。

 などと書いた後で、そういや、「シルヴィーとブルーノ」って妖精姉弟の話だったっけ…と今さらながら思い出す私。だ、駄目じゃん。

 Comics。紫堂恭子「王国の鍵」3巻。

 

9/15

 3連休中、どこにも出掛けないのも悲しいので、↓の展覧会を見に。私のいる街からだと「犀の国 さいたま」までは結構遠いのだけど、こう暑いと、乗車距離より、駅からの徒歩時間の方が重要なので。

 

Art フェアリー・テイル 妖精たちの物語  埼玉県立近代美術館 2003.9.13〜2003.11.3

 妖精の絵の展覧会といえば、いかにも「女の子向け」の軟弱なイメージ。余り期待せずに行ったのだけど、良い意味で予想を裏切られた。本格的な展覧会。

 井村君江氏全面協力の様子といえば、分かる人には分かると思う。会場にあった書籍のほぼ全てと相当数の絵画が井村君江氏蔵という凄さ。というか、本人の書籍に収められている妖精画って、あれは 全部、本人の持ち物だったのか!と驚いた。

  19世紀英国の妖精画ブームの背景には、色々な要素があり、例えば、この前の「ヴィクトリアン・ヌード」展同様の裸体画のエクスキューズという作品も少なからず展示されていた。ただし、もっと切実な、産業革命が進む社会への異議申し立て的な意味合いで描かれた作品も多くあり、それら幻視者の絵画は日常の裂け目を窺わせる魅力を持っている。

 コナン・ドイルの父チャールズと叔父リチャードのドイル兄弟の作品のように。特に、チャールズ(妖精が本当に「見えた」人らしい)の描く独特の世界。

 しかし、今回、何と言っても圧倒的なのは、前半の、数十点にも及ぶジョン・アンスター・フィッツジェラルド。うわぁ、「本物」だわ、この人。ボッシュかブリューゲルを思わせる独創的な魔物 (妖精)達のデザイン。そして、艶やかな色彩。(当時は容易に入手出来た)阿片吸引の影響が強く見られるらしい。私は阿片の経験など無いんで本当かは分かりませんが。

  他にも、様々な書籍の挿絵(アーサー・ラッカムの挿絵が沢山見ることが出来て幸せ)に、ウェッジウッドのフェアリーランド・ラスターという、曰く言い難い色彩センスをした陶器のシリーズ等、色々と貴重な体験が出来た。

 有名な「コティングリー妖精事件」(コナン・ドイルが関わった妖精写真のフェイク事件)についても、そのカメラの展示を含め、ドキュメンタリーフィルム (かつての少女はタフな婆さんに…)を流すなど、妖精のイメージに関心を持って貰おうという熱意が全体として伝わってくる展示内容。

 正直言って、子供には面白さが分からない展示だと思うけど、子供向けに妖精の格好で写真を撮ることが出来るコーナーを作ってみたり、美術館のおばさ…お姉様方は、葉っぱみたいな耳リボン?を付けて、微妙にやる気のないコスプレ姿で立っていたり 、と努力の跡も伺えた(^^;; …どうせやるなら、背中に羽を背負うとか、とことん成りきった方が恥ずかしくないのに。

 

 展覧会では、20世紀になって英国で妖精画が消えるところまでしか述べられていないが、海の向こうの鼠帝国が、その後、そういった遺産を横取りし、独占販売をするようになっていく 過程までも視野に入れた、より大きな流れの中で説明してくれると、もっと良かった。あるいは、リチャード・ダッド(日常という一線を踏み越えてしまった妖精画家の一人として最も有名 な人物)の絵が1枚だけだったのも、やや物足りなかった。

 と文句を言う前に、ファンタシストなら、まず見に行くべき。

 

 ショップで一番気になったのは、「ダーク・クリスタル」の設定画集。映画自体より素晴らしいかも。資料用に展覧会の図譜を買った後で見付けたので、5,600円を出す決心は付かなかったけど。

 ところで、妖精は小さくて空を飛ぶ、というところから(西欧人は、以前書いたように「羽無しで空を飛ぶこと」を想像することが出来ないらしいので)、描かれるイメージがどうしても「ミクロイドS」になってしまう 。しかし、元々は、そういうものでも無かった筈。いつから、昆虫(特に蝶)の姿になってしまったのか、が気になったのだが、展覧会の内容ではそこまでは不明。その辺は、将来の宿題ということで。

 あと、アーサー・ラッカムの挿絵をまとめて見て思ったのは、村上勉氏って、ラッカムに影響を受けた時期があったのではないかと。いや、帰ってきてから改めて見直すと、思った以上に似てな かったのだけど(^^;; 樹の感じとか、受ける印象が近いような気がするので。…単なる、気のせいかもしれないけど。

 

9/14

 オランダ・ベルギーの旅行記。その最終日

 というわけで、旅行記自体は、これで完結。長かった…

 

9/13

 今日の「不思議発見」はアイルランド編。自分が行った場所というのは、それだけで面白いです。しかし、ブラウニー城が出てきて思い出したのだけど、結局のところ、私は全然、雄弁になってないよなぁ。

 今年の旅行記の方は完結する予定が、まだ途中。今日のところは、前回、思いっきり引っ張った?8日目の続きから終わりまで。 皆様が同様の事態に万が一陥ることがあった時の参考にでもなれば、ということで?あえて詳細に書いてみました。…自虐趣味とかでは別にないですよ?

 

9/11

 昔、「ペット楽園」という名のペット用冷温カーペット(29,800円也)の存在に驚いたことがあったが、時代は進化していて、この秋、ペット用のウォーターベッドまで発売されるらしい。

 人間が通常使用するのと同等の機能を備えたという、フランス・ベッド社自慢の新商品で、その名も「フランス・ペット」。……そのまんまやん。一式揃えると117,600円という価格といい、色々と言いたいことはあるのだが、まぁ、需要有ればこそ供給有り、なんだろう。このままで行けば、あと十年もすると、「人間が通常使用する以上の機能」を備えていることがペット用品の常識になっているに違いない。

 

Novel ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 「グリフィンの 年  創元推理文庫

 「ダークホルム」世界の続編。最初からバタバタと騒動が続くので、その内、どこかで緩急の強弱を付けるだろう、と思っていると、驚くことに最後までそのまま行ってしまう、という小説。いや、D.W.ジョーンズの世界に慣れ親しんでいると、実際にはそれ位ではもはや驚かないのだけど。

 むしろ、驚くのは、キャンパスライフ物の設定を借りた何か(前作で異世界を舞台にしつつ、近年のRPGに対する揶揄や冗談が強く含まれていたように)かと思っていたら、真っ当な?キャンパスライフ物だったこと。分量的にもちょうど良いし、D.W.ジョーンズの小説の中でも一番読みやすい作品の一つ。(表面的には)劣等生だった仲間が協力してお互いの危機を解決していくという、まるでマイケル・リッチーの映画のような展開が楽しい。

 それにしても、今どき、こういう作品を書いたのは、「魔法が出てくる小説を書かせたら第一人者」のプライドとして、「魔法学校を舞台にした小説」は本当はどう有るべきか見せてあげます、ということだったのだろうか、やはり…

 

Novel ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 「ダークホルムの闇の君  創元推理文庫

 というわけで、前作も再読。(初読時の感想

 世界設定的には皮肉が効いていて、かなり面白いのだけど、正直言って、読み辛い作品ではあるのを再確認した。感情移入する対象が父親魔術師ダークと、息子のブレイドに分離して、どっちつかずになってしまっているのが難点。ここはブレイド視点を中心にすべきだったと思う。あと解決編が怒濤の如くな展開で読者が付いていけない辺りも問題。

 作者は設定を考える時点で満足してしまって、書く時点では既に面倒になっていたのでは?という気がしないでもない。ダーク以下、魅力的なキャラクターが多いので、もう少し丁寧に書いて欲しかったのだけど。

 

 ちなみに、「グリフィンの年」は、いずれ前作を読む気がある人以外(前作のネタバレにはなっているので)であれば、前作が未読でも特段、問題はないです。

 

9/10

 昨夜の月と火星の接近の様子は、部屋の窓から見ていた。最近はそういう情報に疎く、帰宅途中、歩きながら空を見ていて、両者がやけに近いな、と初めて気付いたのだけど、食ではなかったのが残念といえば残念。

 もっとも、惑星が見かけ上、月に近いことには何の意味もないというか、見る上でも邪魔なだけなのに、何か凄いことのような気がしてしまう、という感覚は一体、何なのだろう。やはり、月に対して、今でも私達は呪術的な信仰心を抱いている、ということなんだろうか。

 

 来年、ウィーン美術史美術館のコレクション展を上野と神戸で開催するらしい。…昨年、やったばかりだろうに。味を占めたのか? しかし、今回はテーマがオランダ・フランドル絵画ということで、(私が行った時、修理中で非公開だった)フェルメールも来るらしいので、行かないわけにもいかない。ひどく混む前に行かないと。

 ウィーンで見損なったといえば、神戸で開催中のクリムト展に、あの「エミリエ・フレーゲ」が含まれているので見に行くべきか、ずっと悩んでいる私。そりゃ確かに、神戸はウィーンやケベックに比べれば遙かに近いわけだけど。でも、そのためだけに神戸まで往復するかというと… 私にとって、クリムトはそこまで絶対的な画家ではないんだよなぁ。まぁ、行くのなら、次の巡回先である名古屋だと思うが、それでもまだ運賃の方が高いという気が。

 

9/7

 丸の内でやっている「Cow Parade」とかいう「牛」を象ったartの展示イベント。

 ブリュッセルの繁華街で似たようなものを見掛けたけど、今回のはひょっとしてあれの真似?とか思っていたら、実は東京やブリュッセル以外にも世界各地で開催され続けているイベントらしい。しかし、西欧人は牛好きだから(主に食べる方で)良いけど、日本の街中で、カラフルな牛を展示してもなぁ。いかにも輸入してきたイベント、という無理を感じてしまう。

 どうせなら、日本人にもっと馴染み深い動物像でやった方が良かったと思うのだけど。例えば、信楽焼の狸とか。ポ○モンとか。

 

 といった記憶も段々薄れてきたこの夏の旅行。その旅行記、8日目の途中まで。…ようやく、ここまで来ました。

 Comics。夢路行「モノクローム・ガーデン」1巻。

 

9/6

 旅行記、更に7日目まで。関心のない方には申し訳ないですが、残りはあと少しなので(と前にも書いたけど)。

 

9/4

 D.W.ジョーンズの「グリフィンの年」読了。予想通り、最後までドタバタし続けていた(^^;;いかにも「D.W.ジョーンズらしい」作品だったので、非常に愉しめました。

 ここ数日、水面下で努力した結果ということで、旅行記、その6日目まで。残りもあと少し(と自分に言い聞かせている)。しかし、これが終わったら次はトルコ旅行を…

 Comics。おがきちか「Landreaall」2巻。快調。珠晶萌え

 あ。1巻の時、感想は後日、と書いたままだったことに今気付いた。作者の作品の中では、今までで一番良い感じで、物語が進んでいっている気がするので、次巻以降、きちんとした感想を書く機会もまた有るかと(…結局、また先送りか い)。

 

9/2

 ようやくダイアナ・ウィン・ジョーンズの「ダークホルム」の2作目が出た。今回は前作から少し時間が経過した世界らしいのだが、…登場人物を結構、忘れている ことに気付く。前作を読んだのは僅か1年前なのに。

 まだ読み始めたばかりだけど、今回はキャンパスライフ物?(最後までそうなのかは知らない) 今のところ、いつものようにドタバタと(こちらは最後まで多分そうだと思う)。

 Comics。TAGRO「宇宙賃貸サルガッ荘」3巻。順調。