移動の日。と言っても移るのは11時過ぎだから、午前中は何とかしなくてはならない。というわけで、モンマルトルの丘へ歩いていくことにする。
丘に近付くと、生活感が強くなってくる。スーパー、服の店、安食堂、この辺りなら少しは暮し易いようだ。丘に登ってサクレクール寺院(丸屋根が印象的な)に入る。中で暫く座ってこれからの予定を立て直すが、別に名案は出ない。
寺院の外に出て、西に向かって行くと、広場に絵描き(くずれ)がワンサとたむろしていて、一人が描かせろという。払わないよというが、いいから5分だけというので、とりあえず描かせてみることにする。描きながら団体客とかTokyoとかOsakaとか聞き、「Utamaro」とか突然言う。何だこいつはと思いながら、絵が出来るのを待っていたが(本当に5分位掛かった)、はっきり言って上手くはなく、やはり買わせようとするが、Noと言って去ってしまう。
しかし、下手だから似顔絵描きなんかしているのか、そんなことをしているから上手くならないのか(だってあんなもので金を取れたら、すごく甘い仕事である)、良く分からない。確かに、この辺は 昔ながらのパリっぽい街並みだが、観光地化されすぎているような気がする。
時間がまだあるのでモンマルトル墓地へ。ここの案内板でトリフォーを発見! 早速、探し出してお参りする。他は面倒くさいので、探すことはしなかった。
寺院の所まで戻って、しばらく、ぼーっと座っていると、 日本人の団体バスがやって来ては正面で一回停まり、そして去っていく。その度に、日本人はバスの中で写真を撮る。自分も似たようなことをしているのだとは思うが、外から見ればその姿は非常に不気味だ。何だか、安全な車内から外を撮る、サファリパークの見学バスみたいじゃないか。
丘の階段に黒人がふろしきを広げて革のものなどを売っていたが、突然ぱっとふろしきを丸めて皆いなくなる。どうしたのだろうと不思議に思っていると、上にPoliceの車。車がいなくなると、皆、広げ直して 元通りである。
荷物を長尾家に移し、昼を図々しく頂いてから、又、外に出る。マルモッタン美術館を目指す。段々天気が良くなってきて、本の葉が黄色く染まった公園が大変きれいに見える。
マルモッタンは思っていた以上に小さく、又小学生がモネの絵をスケッチ(!)していたので、静かな環境でというわけにはいかなかったが、それでも、それなりに堪能できた 。しかし、「印象・日の出」はなかった。依然、行方不明なのか?
2階の特別展らしいゴヤの版画を見てから、エッフェル塔に向かって歩いていく。何とか日没前にたどり着く。切符売り場を見ると、何と天辺は閉まっていて上れない。非常に残念である。仕方ないので、2階までケーブルで上る。
薄暗くなっているが、パリの街並みがよく分かる。どの建物も皆同じに見える。こういうのを、そろっていて美しいというのか、似たり寄ったりでつまらないというのか、私はどちらかというと後者である。じきに日が暮れたので、街の明かりが点くのを待つが、寒いので(体感気温0〜2℃位)、30分位して少し明りが着いた時点で下りることにしてしまう。
ちらほらネオンが郊外のほうで点く。どうも赤・白・青のフランス国旗色しかないようだ。雨が降り始めたと思ったがMetroに着く前に止む。明日は晴れるだろうか?
夕食はカレーである。懐かしさと飢えから2回もおかわりしてしまった。多少、がっつき過ぎではという気もする。明日と明後日は外で少し食べることにしよう。
荷物が20Kgを超えていないかが、今の最大の問題である。超えてさえいなければ、このまま持ち帰りたいのだが、やはりルーブルのガイドブックを送るべきか?
・これからの予定 …残り日数の使い道を持てあましていたので、もう一度考え直してみたが、美術館に行く以外の欲求は無かった。
・トリフォー …当時、トリフォーが私の中でブームとなっていたので(ビデオを片っ端から借りて見ていた)、ぜひ、お参りしなくてはと思った。ちなみに、映画監督のお墓でお参りしたことがあるのは、他には小津安二郎の墓(円覚寺にある)くらいだと思う。
・「印象・日の出」 …ここを訪れる数年前、盗難に遭う。この後数年して発見され、多分戻ったと思う。私は、上野で見たことが有ったので、まぁ良いかとか思っていた。
・多少、がっつき過ぎでは …多少、ではないと思う。
写真:6 Paris