スペインで迎える最後の朝である。しかし、そんな感慨より、天気が悪いことの方が気にかかる。寒くてコートなしでは歩けない。せっかくだから、チョコラーテを飲みに行く。なんだか前より値段が上がったような気がする。
もう一度プラドヘ。気に入ったものだけ、サッと見ることにする。今回もボッシュだけは時間を掛けて部分部分を一つ一つ見ていると、日本人の中年夫婦と日本人のガイドが入ってきて、ガイドが「これぱ天国、現世、地獄を表していると言われています」と説明する。
その言い方にも若干問題があると思ったが、中年、私が10分掛けて見ている「悦楽の園」を2秒眺めて言うことは、「これは値段なんか付けられないんだろうな」。ガイドが特有の(軽蔑とへつらいの混ざったような)笑みを浮かべて同意し、そのまま彼らは去っていってしまった。
金井美恵子が「星の王子さま」の感傷ぶりをあざ笑うのは納得できるのだが、それでもやはり、こういう場合「星の王子さま」を思い浮かべてしまっても仕方ないのではないだろうか。大人は数にならないものは理解できない。 Economic Animal・・・ しかし、見れば見るほど、見たという感じが崩れていくようなので、3時間位で、美術館を出てきてしまった。
昼食を食べていると、バックパッカー特有の暗さ(笑)を持った人が入ってきたので少し話す(この店はやたら量があり、そうでもしないと食べられそうになかった)。YHがほとんどというので、筋金入り (?)だと思う。この人も パリは「目玉が飛び出る程」高いと言い、悪口であけ暮れる。とにかく、イタリアで何事もなく、あそこは別にあぶなくはないという人に初めて会った。
デパートヘ行って茶カン(東洋風の奴、逆輸入か?)とそれからお茶を色々買い、小銭をなくすのに成功したと思うが、ポケットに500Pts残したままだったのを駅で気付く。
が、もうしょうがない。駅で一瞬ユーレイルパスを無くしたかと思ってあせるが、幸い出てくる。今度の旅は幸い、今まで大きな無くし物がない。
‘Puerta del Sol’ に乗り込む。6時15分発ということもあって、ベッドメイキングはしていない。気のせいか、コンパーメントが国内列車より少し広いようだ。残念ながら同席のおじさんのスペイン語が全く理解できず、かといって聞くことも思い付かないので、暗い態度かなと思いつつ、「ホムンクルス」を読むことにしてしまう。結局、最後まで読み通したが、何となく読み急いだ感じで、それほど感動はしない。
9時30分、女子大生の2人(アメリカ人でフランスに留学している子とフランス人)がもう寝たいというので、皆寝ることにする。アメリカ人の方が、日本の夜行はどうなのかと聞くので、 「乗ったことがないから分からない。しかし、日本の列車はこんなに揺れないし、10分遅れたら苦情が出る位、正確だ」と言っておく。
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チョコラーテ …お奨め朝食メニュー。チューロとチョコラーテ(ドロドロなココア)の組み合わせ。朝からベタベタ。でも、良くしたものでオレンジジュースが付いてきたりするのは嬉しい。
・puerta del sol …マドリッドの広場の名前、ではなくて、パリまでの夜行急行。
・日本の夜行 …この時は気付かなかったが、そういえば高校の修学旅行の時は「上野発の夜行列車」を利用して北海道へ行った。