→ Barcelona
クシェットは暖かいのは良いが、やはり、荷物が気になって良く眠れない。でもコンパーメントの方が危険との話。スペインの鉄道はトンネルに明かりがない。その代わりに車内がパッと明るくなる、なんてことも勿論ない。従って、ずっと真っ暗になる。気持悪い。おまけにコンタクトが取り出し難くなっていて(ケースの底)、メガネを掛けていたので、一層気持悪い。
ようやくSants駅に着いたので(前回、夜行が早く着いたので油断したが、やはり1時間遅れた)、緊張しつつMetroに乗り換えると、蒸し暑さから、汗が出て気持悪さは頂点に達する。
しかし、出口の前が、いきなりガウディ(カサ・バトリョ)で、少し気を取り直し、とりあえず、宿をgran-vía沿いに決める。別に良い部屋じゃないし、後から考えてみると 、ランブラス通り沿いにすれば良かったと思うが、1600Ptsだから高くはない(と思ってOKしたのだがchecK out時に、タダだったはずのシャワー代150×4=600Ptsを別に払わせられて頭に来ることになる。してみると、私もバルセロナで宿代を吹っかけられたクチってことか)。
さて、とにかく天気が悪い。用事を(クリーニング、換金)済ませて、ふらふらとランブラス通りを下っていると、いきなり豪雨(風の方が強い)である。どこか太陽の国なの?と思う。その後コロンブスの像までたどり着き、海を眺めるが、灰色の海面に 、どこが地中海なの?と又思う。天気がこう悪いんじゃ、今日は駄目だなと思うが、雨も上がったようだし、何も見ないというのもなぁと、とにかく聖家族教会に行く。
教会に着くと、やはり日本人が沢山いる。だけど、そんなことを通り越して、とにかくすごい。どちらかといったら狂気の沙汰だ。外観の大きさにびっくりして中に入ると又びっくり。出来ているのは外側だけで中は本当に単なる作業中。これでは200年もかかろう。突然、「普請中」という鴎外の言葉を思い出す。外と内の差、果てしない時間、ぴったりだ!?
上まで上って市街を見渡す。夕日に染まった感じは絵画的で悪くないが、街自体は結構ゴチャゴチャして、ヨーロッパの都市特有の調和のとれた美しさは全然ない。
夜、明りが付いているかと思って、カサ・バトリョとS.Familiaを見に行くが、どちらも真っ暗でがっかりする。ただS. F.は、でかい石の固まりという迫力はあった。帰りにのどが乾いたのでcervezaを飲んで(毎日1回くらい飲まないと落ち着かなくなったような。初期中毒? もっとも他に適当な冷たい飲み物がない)、帰ってきたら非常に眠くなったので 、10時30分に寝てしまった。
ところでバルセロナは別に大して危なくはない。ただ、わけの分かんない人間の存在率が高いように思えるから(大道芸人の数も多いし、それにあの地下鉄の駅の絵の数々!)やっぱり何かある時もあるだろう。とにかくせわしない街で、人の足は早いし、車は更にすっとばしてるし、地下鉄は駆け込みとラッシュだし、ダンプは山のように走ってるし、 なるほど、マドリッドのおっとりとはだいぶ違う。まぁ新市街に宿があるから、余計そう思うのかもしれない。
こういうのを活気がある街というのだろうか。しかし、雑然と活気があるという感じで、熱気(Tokyo OlympicとかSeoul)とかではない。どこに近いのかな。神戸よりは横浜。但し、横浜山の手の雰囲気はまるでない。Kidsが前面で騒いでいるという感じは渋谷とか。大阪という 気もするが(ある種の薄汚さは共通か)、ナニワのPower=熱気はない。結局、新しい街の類型としてそのまま受け容れる他ない。しかし、こんな街を歩いて(さぞかしゴシック街のBarをさ迷ったのだろう)、あんな美しい文を書けるなんて、中沢新一の人生というのは、きっと楽しい ものに違いない。
・クシェット …夜行列車の三段ベッドみたいな奴。
・cerveza …生ビール。Barだとどこでも生ビールの栓?が有る。「Cerveza,por
favor」(ビール下さい)は今でも口から出そうになる。
・gran-vía …新市街の大通り。一方、La Rambra(ランブラス通り)は、旧市街のメインストリート。
・聖家族教会 …即ち、Sagrada Familia。書くのが面倒になったと見え、S.Familia、そしてS.F.と、どんどん勝手に縮めて書いている。
・大道芸人 …大道芸人=「わけの分かんない」人間というわけではないのだけど。誰が余所から来ても、驚かない街というか。
・中沢新一 …当時、雑誌「マリクレール」でバルセロナについての文章を書いていた。秘数4が何とかとか言う…
写真:2 Barcelona(Gaudí), Montserrat, Valencia 観光案内:バルセロナ スペインの地図:small(日本語) small large