空の蒼さを 見つめていると


2001年11月

11/29

 コホコホ。咳き込むようで、喉がやや苦しい。…これって、やっぱり風邪、なんでしょうか。

 

Cinema クリストファー・ノーラン メメント シネクイント

 劇場のタイムスケジュールを見たら、平日夕方以降も立ち見、となっていたので、30分前に着く。それで多分、正解。

 時間軸が逆行する、というので単純に帰納法な謎解きを予想していたのだけど。なるほど、ラストまで真相は宙吊りのまま、ぐいぐい引っ張られる。まさに、「サスペンス」。TVシリーズの「ツイン・ピークス」のように、進めば進むほど(この映画だと、戻れば戻るほど?)真実と信じていたことが分からなくなっていく。

 冷静に観直すと粗も結構、有りそうな気もするけど、これだけの脚本を完成させただけでも凄い。サンダンスで最優秀脚本賞というのも分かる。少なくとも「セブン」と同じくらい最後まで見せる脚本。そう、何となくデビッド・フィンチャー的な印象が。あるいは、押井守風味のソダーバーグ? 書いている私も何のことやらよく分からないが。

 「楽しい」映画でも、最後まで観ても「スッキリ」する映画でもないけど、「ひねた映画」好きなら「面白い」ことは保証する。私も少なくとも、もう一回は観直したい。

 ちなみに、観直せばそれだけ更に謎は深まるようで、公式サイトのBBSでは、見方のやり取りが白熱中(ネタバレなので未見の方は、読んではいけません)。

 

11/28

 課内で、1人減員。4人で分担していた仕事を、今後は3人でやることに。仕事量、従前の30%増。…その分、出張で行く場所が増えると言うことで、楽しみ(←ポジティブ・シンキング)

 

BS マックス・オフェルス 輪舞

 もっと華麗なメロドラマを期待していたら、少し違った。簡単に言うと、色々な階層の男女の情事が、いわば「いいとも」方式で一人ずつずれていって十人で一周するという話。なるほど。古き良き?時代の物語の題材とした、古き良きフランス映画。精巧なセットの中を滑らかに移動するカメラ。踊る女優をカーテン越しに撮る、といった女優を美しく見せる様々な手法。

 映像的な美しさは楽しめたけれど、私は、古典的なフランス映画はやっぱり苦手なのかも。風が吹かない世界は見ていて息苦しい。

 

11/27

 何か日々を無為に過ごしている気が。より有効に使うために、今年の残り日数を意識した方が良いかも。残り35日。そう考えるともう何もする気も起きない。…却って駄目じゃん。

 

BS エリック・ロメール 恋の秋

 原題だと「秋のコント」。というわけで、あたかも80年代の「喜劇と諺」シリーズのような軽妙なドタバタ恋愛喜劇。とはいえ、主人公が40台の女性である辺りがひと味違う。息子と二人暮らしで葡萄園を経営する彼女に相応しい相手を見付けようと、息子の彼女や、親友の女性がそれぞれ勝手に画策を始め、前者は、自分の元彼、後者は新聞広告で募集した相手、を彼女に引き合わそうとする… いわゆる、小さな親切、大きなお世話で、事態は逆にこじれていくのだが、そこはそれ、コントなので、最終的には上手く行く、爽やかな結末へ。

 やっぱり、ロメール映画はこうでなくちゃ。「友だちの恋人」とかが好きな人には、特にお薦め。

 ということで、この「四季の物語」シリーズも終了。感想は、・秋・。下にスクロールすれば済む話ですが。面白いのは、秋と春かな。

 

11/26

 紅葉する樹にも色々あるけど、その中で、私が一番好きな樹は、カエデではなくて、一見地味なケヤキ。

 枝振りの先端に到るまでの美しさに加え、その枝の黒さと穏やかな橙色の紅葉のコントラストは、11月の澄んだ青空を背景に眺めていると、いつまで見飽きない。…なぜ、急にそんなことを言い出したかというと。出張や連休の後、一週間ぶりに職場に戻ってきたら、窓の外のケヤキがすっかり色付いていたのだ。

 だから、この時期の白川通りは非常に好きな通りの一つ。ローカルな話題で恐縮。

 

Novel 川上弘美 「物語が始まる 中公文庫

 何か言葉を意識して繋いでいるというか、ややぎこちない気がしてしまったのは、初期作品だから? 男の雛形との奇妙な同棲生活を描いた表題作が一番、読んだ後に広がっていく気がした。何が、というのはいわく言い難いが。

 

11/25

 先程、「NHKスペシャル」の宇宙の話を見ていたのだが、宇宙全体の膨張速度が加速しているとは全然知らなかった。私が学生の頃は、将来、膨張か収縮のどちらになるか、ダークマターの量次第、とか言っていた気がするのだが。十年一昔、というか、十年一未来? しかも、「真空の力」とか、どんどん「エーテル宇宙」likeな話になっていったけど、どこまで本当?みたいな。

 最新の宇宙論につくづく疎くなっていることを実感。いや、もとより詳しいわけでは無かったけど。大まかな方向性くらい。とりあえず今日見た内容では、どんどん広がって最終的には物質のない暗黒の宇宙がただ残る、のが終末。諸行無常の響き有り。東洋思想の方が合いそうな世界。

 話が暗過ぎると思ったのか、インフレーション理論では他の宇宙も沢山発生している可能性があって、そこへワームホールを通って行けば良い(方法は、未来の科学で何とか)という、極めて無責任なイメージを提示して番組は終わっていた。「魔術師のおい」だ、と思ったのは私だけ? この宇宙にもそうすると既に他の宇宙から悪い魔女が…

 

11/24

 部屋で読書をしたり、ビデオを観たりした、穏やかな一日。怠惰な一日、とも言う。少しだけ具体的に言えば、明智抄「死神の惑星」1〜3巻の凄さに圧倒されたりした。

 

BS エリック・ロメール 夏物語

 レナ(恋人だと良いと思っている女性)と休暇を過ごすために、彼女が現れる筈の、とある海岸の町にやってきた青年の一夏の物語。というと、ちょっと綺麗なイメージだけど、実際のところは、彼の果てしなく優柔不断な三ツ股振りを、日々追い掛けていくという、恋愛シュミレーションゲームの駄目な主人公(なのに、なぜか割ともてる)を彷彿とさせる物語。

 映画としては、まぁそれなりに面白いというか、面はゆいというか。観ていて、主人公に言いたくなることは山ほどあるけど。とりあえず、レナは止めとけ、とか。彼が、この経験を通して何も学ばないというのが、また凄いところで、その辺もゲームの主人公なみ。失敗したらリセットすれば良いのか。

 昔の「六つの教訓話」シリーズの時は、物語からの、「教訓」の強引な見付け方に疑問を感じたものだが、せめて、教訓の一つくらい学んで終わって欲しい、「四季の物語」シリーズのダメ人間達を見ていて、つくづくそう感じる今日この頃。

 

11/23

 休みなので、温泉にでも行こう、と思った。この連休で予約もなくいきなり泊まるのも無理なので、日帰り。出来るだけ楽に行けるところ。となると、やはり箱根湯本くらい。

 せめて施設は変えようと、今日は、奥湯本の「湯の里 おかだ」へ。ホテルおかだ別棟の日帰り入浴施設。ホテルに隣接しているのかと思ったら、そこから急な坂道を7分登る羽目に。入浴料は1600円。タオルの貸出を含むけど、やや割高感が。風呂は四つの露天風呂と、内風呂一つと、プラズマ湯なる寝湯とサウナ。新しい施設で、全体に清潔感があったのは良かった。あとは普通。近所の天山よりは空いていると思われるのが長所? 悪くはないけど、また来たいという程ではないかも。

 

Novel 火浦功 「俺に撃たせろ! 徳間デュアル文庫

 「俺の名は、アルツ・ハマー。」という書き出しから、大体予想される通りの人物が主人公の、一人称探偵小説。読み始めてすぐ、なるほど、こういう仕掛けを通してしか現在においてハードボイルド小説は語り得ないとゆーのが、作者の諦念なのか、とか思わず深読みしてしまったわけですが。深読みなんてものは役に立ったためしはなく、終盤に差し掛かる頃には、その「屈折した仕掛け」とやらはどっかに行ってしまっていた。…じゃあ、何でそういう主人公なの?

 というわけで、正直、今一つというか。火浦功らしい文章は楽しめるけど。などと思いつつ、最後に「あとがき−アルツ・ハマーは私だ!」を読んでいて、はっと気付く。そうか、「だから」か。「作者がそう」だから、そうなってしまったのか。…まぁ、それでは仕方ないか、うんうん。

 

11/22

 振替休日だったため昼前まで寝ていたが、せっかくの「平日の休日」なので、警察署へ出掛けて免許証の住所変更をする(前の職場では、そういう暇は全く無く、前の住所のままだった)。これでようやく、現住所の身分証明がある、人並みの状態に。

 ジャック・ドワイヨンの「ラ・ピラート」が急に、しかも強烈に観たくなったのでDVDを探す。しかし、出ていないようだ… こういう、観たい物が観れない時、というのは落ち着かない。レンタルビデオ屋が近くに有れば良いのに。結局、「エイリアン9」vol.3だけ購入。ところで、「Fuji Televison the legend」という7作組のDVDBOXを見掛けたのだけど、内容はというと、「南極物語」「タスマニア物語」「優駿」… これって、つまり、駄作BOX、ですか?

 

CS 押井守 トーキング・ヘッド

 これも懐かしモノというか。昔、東京ファンタで特別上映されたのを観て以来。その割にはよく覚えているなぁと思ったが、そういえば、あの時、パンフレットの代わりに売っていた絵コンテ集を買って読んだのだった。やっていることは分かるし、退屈とは思わないが、「映画についての映画」の面白さというのは、「映画」そのものの面白さには遠く及ばない、のも事実。この映画の中の名セリフの一つに、「映画は二度観る必要がある」というのが有るのだけど、この映画は二度も観れば充分だと思う。

 ところで、「アヴァロン」のラストシーン、少女が悪魔のように微笑む映像、に強烈な既視感を抱いていたのだが、今回、ようやく納得。「トーキングヘッド」のラストシーンのそれ、と同じだった。本当に、イメージの再利用が得意な監督ではある。

 

11/21

 今日の仕事は午後からなので、午前中、グラバー邸を訪問。いつの間にかエスカレーターが上まで設置されているのに驚く。長崎という街は、南国的、というか楽観的という印象を持った。本当はもう少しゆっくり歩きたいところだが、元々観光で来たわけではないし。帰り道、家へ辿り着くまで、乗換で悉く待たされて、疲れる。明日は休みだし、良いけど。

 今夜は、マックス・オフェルス監督の1950年の映画「輪舞」を録画だけして寝てしまう予定。マックス・オフェルスというと、最も甘美なメロドラマの画面を作り上げた監督というイメージだが、この映画でもその期待が裏切られることは、多分、ないと思う。

 題材は、シュニッツラーの「輪舞」。シュニッツラーは、キューブリックの「アイズ・ワイド・シャット」の原作で有名な作家。この「輪舞」は、登場人物の組み合わせを一つずつずらしながら語っていくという形式。言ってみれば火浦功の「死に急ぐ奴らの街」みたいな? って、それはちょっと違うような。

 

Novel 秋山瑞人 「イリヤの空 UFOの夏」その1,その2 電撃文庫

 嬉し恥ずかし純情SFジュブナイル(←いい加減な説明)。肝心なのは設定や内容ではなく、登場人物達の気分そのもので、しかも、それを伝えるのにかなり成功している青春小説。のようにも見えるし、そうではなくて登場人物達も、それまでの全てが失われてしまう、決定的な喪失を描くための題材の一つに過ぎないのであって、いずれ対照されるべき、平穏な日常を今のところ、丁寧に塗ってみせているだけ、のようにも見える。

 何にせよ、とりあえずは、その穏やかな日常の懐かしさを狙い通りに楽しめば良いのだと思う。思うのだが… (多分、その3に続く)

 

11/20

 出張で長崎県へ。えらく天気が良く、途中のバスでは、体が溶けてバターになりそうなくらいの暖かい日差し。というか、実際、かなり溶けてた気が。

 日中やるべきこと(犬を放し飼いにしている家を訪ねて、周りから飛び出してきた十何匹の犬に取り囲まれて吠えられる、とか色々)が思ったより早く終わったので、6時には長崎に着く。というわけで、新地でチャンポンを食べてから、夜景を見に、稲佐山へ。

 前に来たのは学生の時だったので、忘れ掛けていたけど、なるほど長崎の夜景はプラネタリウムの星空を、中心から眺めたような美しさ。いつもなら、この後、市内の温泉に入るという目的があるのだが、残念ながら、長崎は温泉の街ではないので、大人しくホテルに戻って、コンビニで買ってきた「野望の王国」2巻を読んで寝る。…出張した夜の定番と化してきた?<「野望の王国」

 

11/19

 ……狼、来たみたいですね。それも、群をなして。

 それなのに。この地域だけ、しかもこの時間だけ、こうも雲で覆われるとは… どう贔屓目に見ても、「雲が9分に、空が1分」。雲は微塵も減る気配もなく、3時前に、諦める。しかも、朝、起きてみると、外は既に快晴…

 世間には時々、肝心な瞬間だけ立ち会えない「間の悪い人」がいるけど、私も、そういう星の下に生まれた気がしてならない。寝過ごしたよりは、悔いが残らない気がするのだけが救い? 結果的には、同じことだが。今度は、30年後? 期待して待ち続けるには、ちょっと遠過ぎる…

 

 ところで、明日は久し振りに、出張の予定。場所は、長崎近辺。
 ちなみに、長崎と言えば雨、だけど(学生の頃、訪れた時は、凄い集中豪雨で、車が泳いでいた)、今回は、さすがに晴の見込み。

 

11/18

 しし座流星群。かつて星を見る少年、だった私としては、流星雨というのは、それは確かに一度は体験したい現象。しかし、狼少年の如く、そうなることは多分、無いのだろう。今年は、夜中に起きていること自体は不可能ではないので、家のベランダから少し眺めるつもりだが、所詮、外灯が多すぎる住宅街の空なので、大して期待はしていない。

 私にとって思い入れが深いのは、12月の双子座流星群。星を見るのに一番夢中になった頃に初めて見た流星群だっただけに。それから、夏の合宿(中学の時、天文気象部だった)の定番、8月のペルセウス座流星群。しし座流星群は、もともと例年はパッとしないので、特に感慨もない。

 ところで、最近の天気予報が、流星群の情報を詳細に伝えるのには、何か違和感が。天文現象の解説も業務の範囲内、ということか。しかし、見る際の服装にまで注意を述べた挙げ句、「夜中なので、周りに迷惑が掛からないように静かに見ましょう」、って、それはもはや、お天気おじさんが言うべきことではないのでは?

 

Book いしいひさいち 「ほんの本棚 創元ライブラリー

 めちゃくちゃ面白いんですが、これ。書評マンガというか、書評+マンガ。タブチ、藤原、広岡という、いしいひさいち作品ではお馴染み?の3作家が書評を書き、隣にいしいひさいちが四コマ漫画を描くという、コロンブスのたまご的書評集。

 書評を書いた作家毎の違いがもっと明白でも良いのでは、とか書評自体は意外にも穏当なのが多過ぎる、とは思うけど、この本は企画の段階で勝利。中では、やはり藤原ひとみ先生の書評が一番面白いような。いつものように割と投げやりな辺り。こういう書評ページがweb上に有ったら、日参してしまうと思う。

 

11/17

 …ハヤカワ文庫、お前もか>「ハリー・ポッターが 大好きな あなたに。」の帯。

 ところで、メビウスさんの「見下げ果てた日々の企て」で、「犬博物館の外で」や「死者の書」を、力を入れて紹介されているのが、昔からの彼の読者としては、非常に嬉しいです。というか、天才作家ジョナサン・キャロルの世界へようこそ、という感じ。多分、この世界からはもう抜け出せない、と思いますが、大変に居心地の良い世界なので問題有りません(^^;

 

Art 開館六十周年記念名品展 第6部 根津美術館 2001.10.26〜11.25

 第6部は、宗教美術。というか、国宝「那智瀧図」が、目的の全て。

 遠くからはただの古ぼけた絵。しかし、間近で見続けていると、描写の的確さに加え、滝の流れが落ち続ける、気の遠くなるような果てしなさまで、感じ取ることが出来る。言ってみれば、ここには、確かに滝が流れている。しかも、極めて写実的な風景画であると同時に、ご神体そのものを描き切った、崇高な宗教画でもある。これが鎌倉時代の作なのは驚くべきことだが、逆に言えば、近代以降の日本人にはもはや描けない作品だと思う。

 他の宗教絵画は斜め見。基本的に、背景の仏教知識が無いと理解出来ない世界だし。多分、今の私達で言えば、CGで表現した最新の科学知識、みたいなものだと思うのだが。曼陀羅、くらいかな? 当時のインパクトが多少なりとも想像出来るのは。

 ちなみに、美術館の庭園は、紅葉が色付いていて綺麗だった。京都の東山の小さな寺の庭くらいの価値は充分に有り。

 

Art 名品展U 奥村土牛の代表作 山種美術館 2001.10.12〜11.18

 山種、といえば土牛。土牛と言えば、「鳴門」。というわけで、流石に「鳴門」の絵は凄い。大きな渦巻きを描いた絵の孕んだ緊張感。メールシュトレーム、とかいえば、ポーのように世紀末的象徴として捉えたくなるイメージであるけど、ここにあるのは、目の前に渦巻きがあることへの感動、としか言い様がない。そして、だからこそ、見飽きない。

 しかし、実は、「鳴門」は例外的に緻密な作品で、普通は、ほわわわわ〜んとした絵を描いていた人だった。だから、そういう題材(吉野山に遠く煙る花霞とか)だと良い感じなのだが、そうでないと冴えない。大器晩成の画家、といわれるが、要するにそれは下手だった、ということなのだ。特に、人物画は酷い。だけど、「人柄の絵」というか、人の良さを感じさせる絵ではある。そう、絵というのは技術だけでは無いんだよなあ、と思ったりもした。

 ところで、驚いたことに、出展作品の中に、土牛の描いた「那智」も有った。しかし、これは駄目。「那智滝図」を見た後だとなおさらに。邪心が無いのは分かるけど。比べてしまうと、こちらは、中学生の遠足の絵画レベル。ご神体を描くのは、人柄でどうなるものではない、ということか。

 

11/16

 昨日の朝、寒かったのでコート着用を始める。ぬくぬく。一回着ちゃうともう駄目。無しの生活には、もはや、戻れない。

 

BS エリック・ロメール 冬物語

 見ていても全然、記憶が蘇らないので、自分の記憶力に不安を感じたが、後半、登場人物達がシェイクスピアの劇(勿論、「冬物語」)を見に行く辺りでようやく思い出してきた。というか、何で忘れていたかも分かった。前半が、余りにも退屈だったからだ(^^;

 昔、運命的な恋をした女性が、自分のミスで相手と連絡が取れなくなってしまい、その娘を未婚のまま育てているという設定で、恋人が二人いるのだけど、自分勝手に、それぞれを振ってしまう(二人目は非常に良い人なんだけど)12月後半の日々の最後に、最初の相手と、バスでバッタリ再会してhappy end。と、まぁそんな話。何だそりゃ、というか。

 運命的な恋の成就の下りは、吉本ばななの恋愛小説のよう。「すごくびっくりした」としか言い様のない点で。ロメールらしからぬ作品。わざわざ見るほどのものではない。

 

Novel マーヴィン・ピーク 「死の舞踏 創元推理文庫

 ピーク熱が高まってきたので、再読。この作者以外には幻視出来なかったキャラクター像に、ただ圧倒される短編集。美の絶対的な追求者であると同時に残虐極まりない支配者である海賊船の船長スローターボードであるとか。各短編とも刺激的だが、一番深読みを誘うのは、「ゴーメン・ガースト」の原型という印象を与える「闇の中の少年」。魅力的な寓話である、というか。父殺しの神話のようにも見えるし…

 ああ、やはり、読み返したくなってきた、「ゴーメン・ガースト」3部作。しかし、さすがにあれを読むのには、かなり時間が必要。普通の本5,6冊分?

 

11/14

 冬目景「羊のうた」の連載が、ついに「動いた」と話題なので、慌てて「バーズ」を買ってくる。…おおっ。話が動き出した、のは確か。今後は雑誌で追い続けないと。

 ということだけで、今日の更新はなし。ロメールを見ている暇も、今日は無いので。本については「イリヤの空、UFOの夏」のその1を読み終えたばかりで、実は、今もまだ興奮しているのだけど、これは少なくとも2巻まで読んでからまとめて感想を書いた方が良いと思われるので、今日は書かない。

 

11/13

 最近、気付いたのだけど、私の場合、Comicsを読むのに一番集中力が必要。というわけで、読める場所が限られる未読のComicsは溜まる一方。

 

BS エリック・ロメール 春のソナタ

 「四季の物語」シリーズの一作。ふとしたことで友人となった女性高校教師と女子音大生、その父親とその更に愛人の一週間。登場人物が喋り続ける内に、自分の本当の気持ちに気付いていく、というロメール映画の基本に忠実な作品。しかし、昔の、教訓シリーズみたいなコメディではなく、自己認識を深めただけで、状況自体の変化は無かったので、見ている方としては、やや煮え切らないものが。

 でも、友人の父親が主人公におずおずと(かつ厚かましく)言い寄るシーンの演出の可笑しさは、やっぱりロメール。「横に座っても良い?」「ええ」「手を握っても良い?」「ええ」「キスしても良い?」「ええ」……「それ以上は?」「三つの願いは、もう叶ったでしょ」 そう言われてしまうと、確かにどうしようもないよな。

 

11/12

 先月の本が登場する時は、発売日に買った後、部屋で行方不明になっていたものが、再発見された場合が大半です。

 

Novel 梶尾真治 「かりそめエマノン 徳間デュアル文庫

 物語のクロージングの手際は、流石に上手い。相変わらず、発想自体は与太話ですが、こう終われば、何となく納得。読後感は大事、だと思った。

 

11/11

 「ピストルオペラ」の前に、あの「スパイキッズ」の予告編を見た。年末の公開らしい。確かに、あのおバカなノリは、正月向きかも。この際、もう一度観に行こうかな?

 でも、これだけは観に行かなくては、と思ったのは、「モンキーボーン」予告編。

 ティム・バートンと一緒に「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」を作ったヘンリー・セリックの監督作品。事故に逢った主人公の意識が、「ダーク・タウン」という悪夢の世界に迷い込む、というコメディのようだけど、その世界の住人に関するイマジネーションだけでも必見、な感じ。ダークファンタジー系の世界が好きな人には。12月渋谷シネパレスでのレイトショー予定。チラシが、既にレンタル&セルDVDの宣伝の方を中心とした構成で、興業収入に期待していないのが明白なのには、やや悲しいものがあるけど。

 現在、上映中の作品の中で気になっているのは「メメント」。時制に凝った作品、というのは、割と好きなので。「トト・ザ・ヒーロー」とか。しかし、駄作が多い分野でもあるので、観てみないと何とも。これは、記憶が十分しか保てない男を主人公に、殺人事件の真相を巡って、時間を段々遡って語っていく、という展開の様子。

 

 今週は、BSで、エリック・ロメールの「四季の物語」シリーズ4作を月〜木の夜中に上映するので、録画の予定。ロメールは、本当は映画館で観たいところだけど。この頃からは観ていないので、とりあえずTVででも。といいつつ、季節が冬のロメール映画を公開時に観た記憶があるけど、この中の「冬物語」? 数年前のことが既に思い出せない私。「メメント」?

 

11/10

 あの旅行記、終わらせました。

 ようやくというか、6日目7日目以降を一気に。ちょっとした事件が発生する他は、消化試合みたいな日々ですが。途中まで読まれた方は、この際、最後までどうぞ。

 

11/8

 後ろの人が画面を見難くなる髪型をした人の映画館への入場は、法律で禁止するべきだと思う。

 

Cinema 鈴木清順 ピストルオペラ 渋谷シネパレス

 「清順映画としては、まぁまぁ面白かった」という感想。もう少し短ければ、なお良かった。途中、少し中だるみな気がしたので。

 私は別に、清順信奉者ではないけれど、一つ一つの画面の面白さ、そして意表を突きまくる繋ぎ方、という点で、ワンアンドオンリーの監督であることは確か。劇映画、としてみるより、ケレン味溢れた見せ物、として捉えれば良いのではないかと。

 作品への不満としては、「チャンプのめ組」こと平幹二朗が、かつてのチャンピオンという説得力に乏しいこと。最後の叫び声は、好きですが。

 ちなみに「シナリオ」に載っていた伊藤和典の脚本を読んでみたら、驚くべきことに、脚本に忠実だった(笑) でも、他の監督が映画化したら、絶対、こうはならないと思う。

 

11/7

 以前購入した物の消化に努める。

 

Novel マーヴィン・ピーク 「行方不明のヘンテコな伯父さんからボクがもらった手紙 国書刊行会

 北極を冒険中の伯父さんから届いた、誤字脱字だらけで、おまけに伯父さんの絵が随所に描いてある、奇妙な何通もの手紙。という形式で語られる、ヘンテコな冒険の絵物語。誤字脱字の様子を、手書きを含めて再現した訳文であるとか、色々な意味で趣味の一冊。他人にいきなり薦めるのには、躊躇うものがあるが、挿し絵画家としてのマーヴィン・ピークの仕事をもっと見たい人には、最適。凝った訳は、横山茂雄。

 特に、伯父さんの良い相棒である、亀犬(二本足で歩く、亀のような生き物)「ジャクスン」のとり済ましたキャラクターと、そのイラストが、秀逸。

 読了後、「タイタス・グローン」巻末の荒俣宏の解説などをパラパラ読み返している内に、「ゴーメン・ガースト」3部作も再読したくてたまらなくなってきた… こんなことをしていては、新たな本が一向に読めないのだが。短編集「死の舞踏」だけをとりあえず、再読することにしようかな。

 

DVD 押井守 「御先祖様万々歳」BOX SPO

 BOX自体の出来は、価格比、甚だ良ろしくない。音質も、全然プレミアムでないプレミアムディスクも。しかし、押井守度150%(濃縮還元)な内容は、やはり面白い。全6話の内、第1話が飛び抜けて傑作なのだが、第4話、第5話辺りも良い。個人的には、レンタルで一度見た以後、再編集版「麿子」の形でしか再見しなかったので、「麿子」では切り捨てられた第5話という「最終回」が、久々に見られたのが嬉しかった。そう、第6話、昔も思ったのだが、これって蛇足のような…

 …見たことのない人には、何のことやらな感想ですが。なお、廉価版が年末に出るようなので、必要な方はそれを待つのが吉。

 

11/6

 昨日の日記を受けて、というわけではないのだけど、帰りに大丸ミュージアムへ。

 

Art 石本正展 大丸ミュージアム 2001.11.1〜11.13

 画業60年の日本画家が、地元島根に美術館が開館したのを記念して開催した展覧会。ずっと裸婦を描いてきた人なので、今回の新作数十点も全て裸婦。あとは半世紀前に描いた馬の大作。生涯を掛けて、しかも80の齢を超えて、毎日、裸婦を描き続ける、というのはどういうものなのか、私には今一つ想像しかねますが。

 図録に寄せた梅原猛の文章によれば、京都市が功労賞だかを与えようとした時(京都市芸大の教授だった)、「私は毎日、裸婦を見ては描いて暮らしている。もし画家でなければ銭湯で覗きをして警察に捕まっているようなことをして生活していられるのだから、賞などは頂けない」という理由で、受賞を断った人らしい。

 色調に関しては独特の美しさだと思った。裸婦の肌色は、どちらかというと霊安室の方だけど。cool beauty?←違います

 

 帰りの電車で、加納朋子「水曜日の水玉模様」を再読。そうそう、私も新入社員の頃、小田急の町田駅が下車駅だった。感想としては、昔書いたこんなのとか、こんなの

 

11/5

 百貨店系美術館が閉館するニュースを相次いで聞く。新宿の小田急美術館が、現在の展覧会をもって年内に閉館。同じく新宿の伊勢丹美術館も、来年3月で閉館だという。特に、後者の伊勢丹美術館は、小学生の頃、ルノワール展を観に行って以来、今まで色々な展覧会を観てきた、割と馴染みの深い美術館なので、そのニュースはややショックだった。

 もう、百貨店が美術館を運営するような時代ではないのか… これで、百貨店系で「美術館」を名乗っているのは、首都圏では横浜のそごう美術館だけになる。まぁ、Bunkamuraのような美術館も他にあるけど。しかし、近代以後、百貨店が主に果たしてきた西洋美術の紹介・伝達機能が、こうして失われつつあるのは、由々しき事態のような。

 これが、今では百貨店で洋服を買う人の方が少数のように、選択の幅が広まった結果なら良いのだが、公立美術館の収蔵・展示の状況は、決して改善しているわけではなく、今起きているのは単に、絵を観る機会の減少、だと思う。この壊滅的な状況に対し、何か打つ手は無いのだろうか。個人的には、観たい展覧会は出来るだけ行く、ことしかないのだが…

 

 川上弘美が、最近の私のブーム(今頃、という話もあるが)。「神様」とか「蛇を踏む」とか。著作を一遍に読んでしまうと勿体ない気がするので、ぽつぽつと読んでいる。作品に登場するものたちの中では、壺の中に住んでいる、何だかうかつな幽霊、コスミスミコが、個人的にはツボ。

 

11/4

 お魚くわえたドラネコ追い掛けて、はだしで駆けてくのに相応しい、良い天気。一日ずれてる?

 

BS  天翔ける風に

 野田秀樹版の「罪と罰」を謝珠栄がミュージカルとして演出したもの。主演は香寿たつき。7月公演の録画分を11/3に放送。

 実際に劇場で観たら、恐らく満足出来たのではないかと。野田秀樹版の「罪と罰」も戯曲を読んだだけで、劇を観たことはないので、ミュージカル仕立てに対する違和感が先に立つこともなかったし。概ね、上手い演出だと思った。ただ、台詞がメロディに載せられてしまうと、言葉それ自体の切なさ、みたいなものが立ち現れてこないもどかしさを、特に山場で感じたのだが、劇場で観ると、その辺は直接伝わるものなのだろうか。

 綺麗で、贅沢な舞台だと思うけど、戯曲の表面をなぞっていているようで、やや物足りなかったのは、ビデオだからか、実際そうなのかは不明。

 

11/3

 晴れの特異日に雨が降るなんて… 今年って、特異年?

 

Novel 菅浩江 「アイ・アム I am. 祥伝社文庫

 今年の祥伝社400円文庫の中で、いきなり、ハートのエースを引き当ててしまった感じ。読んだ感触としては、乙一作品(非・暗黒系)のような、おずおずとした、だけど優しい肌触り。扱われている問題は、語り方を含めて、古典的なものだと思うが、この400円文庫の、中編という長さを上手く使って、新鮮で力強い読後感を与えてくれる。感涙の近未来小説、というのも頷ける佳作。ソンゲンという言葉が胸に響く。

 

 ところで、私は、自分をSF者と思ったことはなく、何かを「これはSFではない」と思うこともない。しかし、同じ400円文庫でプラネタリウムが題材の本、これはいくら何でも小説ではな…

 

11/2

 「The Sneaker」12月号。実質250Pの雑誌で、私の読むところが222Pから後だけ、なのは何というか。

 「切なさの達人」という呼ばれ方が嫌になったのか、スニーカーなのに?今号の乙一作品のタイトルは「GOTH −暗黒系−」。内容も、紛ごう方なく「暗黒童話」系。これには説明が必要だと編集部が判断したとみえ、本文の後に「変貌の真相は!?」というインタビューが載っているのが笑える。そこで乙一は、「バットマン・リターンズ」が好き、という発言をしているのだが、それはよく分かる気が。あの映画は、ペンギンマンが主役。言ってみれば、世界に最初から疎外されている者の、ダークで切ない思い。なるほど、それが乙一の求めている方向性なのか。

 「バットマン・リターンズ」が泣ける映画だと思っている私にとって、ある意味嬉しい方向ではあるのだけど、ますますメジャーになる日は遠のいていくような…

 

11/1

 ル・シネマで「紅い眼鏡」と「ケルベロス」を観る。これで、今回の押井守レトロスペクティブへの参加は終了。

 

 久々の「紅い眼鏡」は、思っていた以上に楽しかった。川井憲次の鮮烈なテーマ曲。兵藤まこの「紅い少女」の美しさ。お馴染みの夢と現実に関する堂々巡りの物語。そして上と下。自主映画として作られた背景もあって、稚拙な部分も多い作品だが、それでも、私はこの作品がとても好きなことに、今回、改めて気付いた。「パトレイバー」以降は、面白いと思うことはあっても、好きだという思いが先立つ作品は無いのとは対照的に。それは、作品自体の輝きによるものなのか、それとも、出会った時期の感受性のレンジが違った、というだけのことなのか。

 そう、大学受験の真っ直中、この映画をキネカ大森まで見に行った日のことは今でも覚えている。…1987年冬、人々は凍てついたアスファルトの上で、おのが吐息を白く染め上げていた。ひどく寒い。あの日は…確か、雨だった。結局、受験生としての先が見えない不安に同調した、ということなのだろうか。当時は、この映画のサントラも繰り返し聴いていた

 

 「ケルベロス」については…私にはどうでも良い作品、という感想は変わらず。というか、本人以外にとって、多分、観る意味はほとんどない。犬とご主人様の物語なんてものに関心のある人が本人以外にいれば別だが。