ダブリン発、ヒースロー空港乗り換え、成田行き
出発は9時、というわけで、その前に近所を散歩。イースター蜂起の舞台である中央郵便局に行って(といっても、ホテルのすぐ近くだ)独立を記念する英雄のブロンズ像を見たり、街角に置かれているジョイスのブロンズ像を見たりと。今朝は、曇り。 バスに乗ってからは、ポツポツと降り始める。今日からはまた天気は悪いらしい。もっとも、もはや私達には関係ないのだけど。
ところで、この旅の間、オコンネルの話は何度か聞いたが、19世紀の独立運動の歴史で欠かすことの出来ない、もう一人の巨人であるパーネルの話は全然聞かなかった。回った地域が片寄っているせいもあるとはいえ、パーネルは今でも日が当たらない存在なのだろうか(パーネルは、当時の道徳観念における「不倫」スキャンダルで失脚した政治家である)、と思っていたが、空港までの道のり、市内に大きなパーネル像を見掛けた。とはいえ、片や目抜き通りにオコンネルストリートと名が付いているわけだし、評価の「差」は今もまだあるのかも。
空港までの途中、非常に貧しいアパートが建ち並ぶ一角を通り抜ける。ガイドブックだと、絶対行かないように!と書かれるような地域。運転手によると、じきに再開発して、もっと近代的な町並みにする予定になっている、とのことだが、自分たちの見てきたアイルランドのイメージが、こういう部分を故意に切り捨てた、一面的なものでしかないことも、感じさせられる。住んでいる人にとっては、必ずしも「妖精の国」というわけではないのだ。
空港に到着。運転手のPJ氏とはここでお別れ。非常に生真面目な、プロ意識に満ちた人だった。それだけに、一度、この先で、自分のおばさんが手を振って待っているから挨拶してくれ、と言われた時には、添乗員以下、皆すっかり騙されてしまった。確かにその先で、「手を振っているおばさん」には出会えたのだが、但し、それは、壁に描かれた、身長5mのおばさんだったのだ。やはり、アイルランド人たるもの、一度くらいは、ジョークで人を引っ掛けておかないと気が済まないらしい。
空港は、来た時以上に混雑している。チェックインの手続きが済むまで、本屋で時間を潰す。何となく「Japan」のガイドブックを手に取ってみる。予想通り、京都とか鎌倉とかにページ数が多く取られていて、これだけ見ると、東京の隣に、京都と鎌倉があるような感じだ(鎌倉は間違ってはいないけど)。一方、突然、白川郷の説明があったりするのには驚く。日本人だって、そうそう行かないぞ、そこまで。でも、もしかしたら、世界遺産とかになっていたんだっけ?
結局、「Beautiful IRELAND」という写真集を、購入。ドゥーン・エンガスを上空から撮った写真が入っていたので、これを見せれば、その端に腰掛けることの凄さがよく分かるだろう、という意図からである。
あとは、セーター代について、消費税の還付手続きを受けて(忘れた頃に、小切手が来るらしい)、お土産コーナーで、シャムロックのアクセサリー (ピンで止めるもの)を買ったぐらい。ユーロは多少残ってしまったのだが、紙幣は日本でも戻せるし、小銭は旅の記念ということで、取っておくことにする。
ヒースロー空港行きのエア・リンガス。機内誌を捲ってみると、アイルランド人のワールドカップ体験記とでもいうべきものが載っていた。 記者は、日本滞在を満喫したらしく、夜はRoppongiで盛り上がったようだ。う〜ん、外国人にとっては、日本に行くなら、六本木だけは是非行かないと、という話にでもなっているのだろうか。
2時間弱で、ヒースロー空港に到着。かなり乱暴な飛行で、到着時も、まさにドスンと着陸。不時着したのかと、一瞬、機内の皆が思ってしまったくらい。
またしても空港内を長く歩いた後、1時間ほど、乗り継ぎ待ち。せっかくなので、紅茶を少し買いこみ、ついでに、パディントンを一体購入。 ちなみに、どちらも自分用ですが、何か?
こういう縫いぐるみの熊とかは、やはり文明国である英国製品に一日の長が。アイルランドにも熊の縫いぐるみはあるのだけど(長い毛の茶色い熊で、緑の服を着ている)、今一つ、可愛くないのだ。
そういえば、アイルランドには、野生の熊はいるのだろうか。鮭が川で捕れるのだから、暮らせそうな気はするけど。でも、熊が出るんだったら、羊の放牧とか出来ないような気も。大体、ケルト神話でも、(神は色々な姿に形を変えるのだけど)熊になったという話は聞いたことがないような… 少なくとも、アイヌのような、熊に対する高い位置付けは無いと思う。
成田行きの英国航空に搭乗。窓側に座ったのに、曇っていて何も見えない。
前面の液晶画面で「スパイダーマン」を観る。しかし、こういう画面は、小さいのは当然として、カラーバランス等も滅茶苦茶なのが、一度観たことのある映画だとよく分かる。これで「観た」とか言われては、監督としては、あんまりかもしれない。
あとは、ひたすら眠るのみ(でも、こういう時は余りよくは眠れない)。
成田着、帰宅
日本へ。途中、上空から猪苗代湖が見えた他は、最後まで曇っていた。昼前、成田到着。あれっ、何か右足が痛い。筋肉痛? 気温は、曇っているせいか、思ったほど暑くないような。
駅に降りると、普通の電車は1時間後まで無し。仕方ないので、成田エクスプレスに乗る。電車が地下から出てきて、車窓から、日本の風景を久々に目にした時、まず頭に浮かんだことといえば。
「羊がいない…」 そりゃそうだろう。マザー牧場とかでなければ、普通、いないってば。それくらい、アイルランドの風景に馴染んでしまっていたのかと、自分に対して少し驚く。
隣には、英国での1週間のサマースクールから帰ってきたらしい中学生と、その娘を迎えに来た母親が2組。 話を聞きたいのは、分からなくもないが、家に帰ってから幾らでも聞けるのでは? しかし、隣の席に座っている母親の方は、娘から話を聞き出そうと、大声で喋っている。 あの、こちらは眠いんですが…
東京で、周囲の客はほとんど全て降りたので、自分たちの会話を続けるなら、他の席に移ってくれるかと期待していたが、すっかり舞い上がったままの母親は、そういう配慮も全然ないまま。少しは周りを気にしてくれ。
子供を外国にお金出して短期合宿させるのも良いけど、それより、もっとちゃんとした言葉使いを学ばせた方が良いのでは? というか、お母さん、あなたの方が、礼儀作法をもう一度学んだ方が良いのでは?と言いたい気分が非常に募るが、寝不足でぼーっとしている私は、何も言えないで終わる。…全然、雄弁になってないじゃん。
3時過ぎに、帰宅。昨年同様、しきりに蝉が鳴いている日本の夏である。羊はいないけど。
・後日談その1。
その日の夜、恐る恐る乗った、体重計の上で。……!? や、痩せてる? え〜と、じゃがいもダイエット?
・
後日談その2。
右足のふくらはぎの痛みが数日経っても、引かないので、やや怖くなって医者へ。大きな所じゃないと、静脈の検査(エコノミー症候群は足の静脈に血栓が出来る病気なので)は出来ないと、そこで紹介された某大病院へ。
2時間近く待った後の2分間の問診。「ひょっとして、私、エコノミー症候群ですか?」「あれは着陸直後に、肺に血栓が詰まる場合なので、多分、違います 」「はぁ」「でも、一応、撮影の予約を入れておきますか?」「お願いします」
というわけで、予約を入れようとすると。「最も早い日で、10月10日になってますね」「…入れなくて、結構です」 何か有ったら、その前にどうかなってるってば。更に数日後、痛みは引く。結局、機内で無理に足を動かそうとしたあげくの、単なる筋肉痛だった様子。………。
May the luck of the Irish be with you today.
(向こうで買ったシャムロックのお守り?から)
長文に、最後までお付き合い下さり、有り難うございました。
なお、旅行中に撮影した写真の一部を、フォトアルバムにして
います。よろしければ、合わせてご覧下さい。
また、旅行前に読んだアイルランド/ケルト関連の書籍の感想をこちらにまとめています。