クロンマックノイズ、コング、コネマラ地方
朝7時台、TVを付けると「ゾイド」をやっていた。元々、ああいうキャラクターデザインなので、英語でも余り違和感は無いような。今朝の湖畔は、昨日の賑わいが嘘のように、人気無く静まり返っている。今日から平日ということを思えば、当然かもしれない。
空は曇り(霧)で涼しい。本来のアイルランド的気候に戻った感じ。
バスは、クロンマクノイズに向かう。隣町程度しか離れていないので、すぐに着く。ホテルの横の湖からも流れている、シャノン川というアイルランドで最も長い川に面した修道院(跡)で、ここもケルト十字、ハイクロスで有名なところ。 地理的には、大雑把に言って、アイルランド島のへそ、というか真ん中にある。
まずは、ビジターセンターの視聴覚室?でビデオを見せられる。ここの教会の創始者である聖キーランがキリスト教に目覚め、アラン諸島で勉強し、故郷に戻ってきて教会を建てるまでの物語。結構、エンターテインメント?な内容で、意外と面白かった。ビデオの最後の方では、今でも多くの信者を集めているということで、ローマ法王が訪ねてきた時の場面なども登場していた。
ビデオを見た後、敷地に入る。あいにく、霧雨が強くなる。レインウェアを被って歩く。実は、一番メインのケルト十字はここではセンター内に移してしまっていて、外に立っているのは等身大のレプリカなのだが、そう言われないとまず分からない。遺跡という点では、奥にシャノン川、その手前に円塔、そして草が繁る敷地に、教会跡や、十字架等が ポツポツと存在している、非常に「アイルランドらしい」雰囲気の場所だった。
今日は、基本的にはバスでの移動日。というわけで、バスの中での添乗員の話。アイルランドの食事はcoldからhot、という流れとのこと。朝食も冷たいものの後にhot meal、ディナーもサラダ(スープとパンという場合もあるけど)の後に、メインの肉、そして食後にお茶。なるほど、なるほど。まぁ、夏だってこの気候なのだから、体を「冷やす」より「暖める」食事の方が好まれてもおかしくはないかも。
昼、雨の中、街へ向かう。昼食の時間まで、コンビニで買い物。当地の紅茶を買う。定番のBureys。ホテルの部屋に有るのも必ずコレ。こちらの(普通の)ホテルでは、湯沸かし器は必須のようで、私もよく利用した。日本のホテルにある、下から容器を暖めるタイプじゃなくて、 水を入れる部分にニクロム線みたいな電熱器がそのまま飛び出ていて、しかも銅なのか、緑色に変色していたりするので、湯を沸かすのが非常に躊躇われる気分にはなったけど、その代わり、これだとガンガンに沸くのだった。紅茶にはこうでないと。で、先程のBureysのティーバッグを入れて飲む。そうそう、こちらでは紅茶=ティーバッグ。で、買ったのは40袋で、185ユーロだから、230円くらい? 安いです 。
ホテルで昼食。サラダ、キャベジベーコン。つまりベーコン&キャベツなのだけど、ベーコンがとてつもなく巨大。というか、この肉の厚みは一体、何? 私は今まで、ベーコンとは薄い薫製肉を呼ぶのだとばかり思っていましたよ。付け合わせは例によってジャガイモ。デザートはフルーツトライフル。昨日の反省にもとづき、ベーコンは一枚を残し、 フルーツトライフルは真ん中にナイフを入れ、半分だけ。焼け石に水、という言葉がふと浮かぶが、決してそんなことはない。と信じることにする。
そういえば、この街が何という所だったか思い出せないのだけど、ホテルが「Lynch Hotel」だった、ということから検索してみたら、ホテル・チェーンだった。でも、町中にあるホテルという条件から、多分、Ballinasoleという街で良いと思う。バリナソル ?
バスでの添乗員の話の続き。アイルランド人らしい風貌について。赤毛、そばかす、童顔風だという。ロン・ハワードが、確かそんな顔だったような? そういえば「遙かなる大地へ」に関するインタビューで、これは自分の祖先達の物語なんだといった趣旨のことを答えていた記憶が(うろ覚え)。あとは名前の話。アイルランド人らしい名前として、Mac(の息子)とかO’(の子孫、孫)とか。アイルランド人の半分はどちらかが付いているとか何とか。ちなみにマクドナルドは、Macではなくて、Mcの方なので、スコットランド系の方だったかと。
コングで小休憩。映画「静かなる男」のロケで有名な場所だ。映画の中でバーとして登場した、実は雑貨屋があったりする。但し、それ以外に映画の場面を思い出せるところが町中にあるかというと、よく分からなかった。もっと郊外でロケしていたんだろうか? あるいはセット? でも、私の記憶力の悪さは折り紙付きなので、本当のところは不明。BSで観たのは去年で、決して遠い昔では無いのだが… ここは一言で言えば、水辺の村である。川に修道士達の魚釣り場跡が残っている。下を覗くと確かに、魚が色々泳いでいる。近くには、サーモンの養殖場もあるらしい。
コングを出て、コネマラ地方を西に向かう。途中、見晴らしが良い、ということで、一旦停車。下り斜面の向こうに、細長い湖が横に広がっていて、その更に奥にはまた低い山。湖の中には、有名な「ネス湖の恐竜」の写真のように、楕円形の丘が何十もその「背中」を水面上に出している。これは、氷河が去り、ドラムリンが出来た後に、水が間に入ってきて、大小のドラムリンの丘が湖面に浮き上がっているような姿になったということだろうか。こういうGreat viewな景色を目にした時は、日本人なら一句詠むべきなのかも。何か松島を思い出すような風景だし、ええと、ええと… コネマラや、ああコネマラや、…て、そのままパクってどうする。
この辺はアイルランドの中でも最も土地が痩せた地域。泥炭(ピート)の層が広がっていて、花と言えば、黄色いエニシダと赤紫のヒースが所々で咲いているばかり。スコットランド的な風景、というのが分かり易い説明かも。 と言ってもスコットランドに行ったことなどないですが。ところで、ヒースと言えば、「嵐が丘」だが、「嵐が丘」と言えば、勿論「手旗信号式」である (違う)。もっとも、ここでは、そもそも人自体が風景の中にいないので、手旗信号を送るのも無理。
では何がいるかというと、羊。ひたすら、羊の放牧地なのだ。この沢山いる羊は、何のために飼われているかというと、昔は羊毛だったらしい。セーターの材料。しかし、今では羊毛自体の価格競争力が無い上に、他の国の方が羊毛も安いらしい。従って、今車窓に見えているのは、全て食用なのだという。…ちょっと可哀想な気が。なお、昔はマトンとして食べていたこともあったが、今は子羊肉 のlam肉が主流。2歳の段階で出荷するらしいっちゃ。
それにしても、山で視界が遮られている風景というのは、こちらでは極めて特異なのだが、日本人的には、どこか安心する風景だと言うことに気付く。
アイルランド唯一のフィヨルドの横を通る。霧雨が濃くて、はっきりと見えなかったのが残念。湖かと思った。
今日最後の訪問地、カイルモア修道院へ。元々は19世紀にこの地を気に入った英国の富豪が、妻のために、土地を買って建てた別荘で、その後、修道院となったもの。今では女学校の寄宿舎として使用されている建物らしい。霧に包まれた湖畔に映る、お城のような全寮制の女学校… 思わず、「Picnic at Hanging Rock」に出てくるような(神隠しに逢ってもおかしくない)「女学生」達のイメージを連想してしまう私。……あの、お兄様は「女学生」に幻想を持ち過ぎだと思います。
バスに戻って。外の景色で、地面から切り出した泥炭の柱が積み重ねてあるのが目に付く。何でも、中の湿気をああやって抜いているらしい。逆に染みこむことはないので、こういう雨の中でも 「干せる」のだとか。
ぼーっと車窓を眺めていると、ヤママヤー!じゃなかった、狐のような動物がいたのを見掛ける。ちょうどこちら側を見ていたので、視線が一瞬有ってしまった。う〜ん、狐かなぁ? 多分、ここでは羊に天敵がいないから、ああやって放牧されていると思うのだけど、狐がいるのなら、羊を襲いそうな気が。狐のような牧羊犬?
帰り道、交通事故による渋滞で、少し遅れた後、 今日明日泊まるゴールウェイに辿り着く。昼間一回通過したので、戻ってきた、という方が正確か。夕食は、街中で中華。スープ、揚げ物。鳥とカシューナッツ。酢豚。牛等々。こっちの人はとろりとしたものが好きとか で、全てどろどろとあんかけ状態。 そんなの、こんなに沢山食べられません。
いつしか、中年のカメラマン(推定) とあの爺さんは一緒に食事をするコンビになっていた。私は、出来るだけ近付かないようにしているのだが、食事時に、隣のテーブルからその会話が聞こえてきたりするのは仕方ない。
前者は、前の旅行の時、どこかの教授と揉めて、この旅行社のツアーから相手を出入り禁止にしたと自慢げに話しているし、後者は、自分はこの旅行会社の社長と長年の知り合いである (だから何?)とか言い出す。どうでも良いが、どっちもどっちというか…
二人の話は、世界で今まで一番美味しい食べ物は何だったかという話に移っていた。爺さんが、ダチョウの足だとか言う。世界の隅々を回るくらい見聞を広めても、人格陶冶には全く何の役にも立たない人もいるのだなぁ、と心の中で思う。
戻って、またしても意識を失う。しかし、ここで洗濯しないと明後日、着る物がなくなるので、起き上がって、洗濯。
ホテルのグレードは、段々落ちてきたような気がする。最初は5つ星で、次が4つ星。ここも4つ星なのだけど、食事、設備的に明らかに一段階くらいは低下した感じ。まぁ、 ホテルなど、寝られさえすれば、別に良いのだけど。