よくも、こんなところまで見付けて頂きまして、本当に恐縮です。
せっかく見付けて頂いたおまけとして?、この「日記」はその後、どういう話となる予定だったのか、を書こうかと思います。
書けなかった話について語るのは、格好悪いというか女々しいとは思いますが、実際に続きを書くこともあり得なくなった気がする以上、ここで、その「夢」について書いておくのも一つの決着の仕方かと思いますので。
なお、ここから書くことは実際にプレイされた方にしか、よく分からないと思いますが、その点ご了承下さい。
さて。
別ページで、この日記は、試験期間中に閃いた、登場人物の内面の反応付きリプレイ小説だと述べましたが、実は、その時浮かんだ最も悪魔的な閃きとは、何回でもプレイ出来る、このGameのシステム自体を、物語に取り込む、ということでした。
つまり、実は何度も何度もサルーインとの戦いが繰り返されている世界、という設定です。
勿論、その前提として、例えば、M.ムアコックのEternal Championの考え方が有ったりしたのは事実ですが、ともあれ、この考えには我ながら、思い切り、興奮しました。
考えたのは、最後の決戦で敗北するサルーインが必ず時間の流れを巻き戻すという世界設定。そして、何十年か分、時間は戻ると、その度に新たなパーティが結成され、そして、又サルーインに挑む、その繰り返し… ただし、パーティーが勝っても同じことの繰り返しになるとはいえ、もし負けたらその瞬間、その歴史が確定してしまう。どの戦いにおいてもパーティは負けるわけにはいかない、一度きりの戦いであることは言うまでもないのです。
で、ここからがこの物語のポイント(笑)ですが、この世界の中で、この繰り返しに気付くのはほんの一握りの存在でしかない、ということです。張本人であるサルーインは勿論、そして大いなる力を持つ存在のデスや、四天王はそのことを知っていますが、人間は次の二人を除いてそのことに気付くことは有りません。
一人は、あのナイトハルト。
10代でスカーブ山でタイニィフェザーの羽を取りに行った彼は、そこでタイニィフェザーと会うことで、全ての記憶が戻ります。それは、彼にとって極めて忌まわしいものでした。彼は、このリプレイの中で狂言回しの役しか演じ得ません。しかも、それは、婚約者ディアナとその弟アルベルトを不幸にするきっかけの役であり、パーティから、アクアマリンというディスティニーストーンを取り上げる役であり、そしてパーティの一人、アイシャの村に併合を迫る役でもあり… 10代の彼にとって、この記憶は苦痛でしかない筈です。そして、人知れぬ苦悩を重ねた彼は時が来ると、いわば自嘲的に、この役を演じ始めます。きっと、彼にとっては、永遠に続くこの役から解放されるならサルーインが勝っても一向に構わない、とさえ思うようになっているのかもしれません。こうして、本編では実は単なるこけおどしのカツアゲキャラだった、ナイトハルトは、世界とその繰り返しに飽いたニヒリストとして、新たな姿を得ることになるのです。
もう一人は、踊り子のバーバラ。
なぜ彼女なのかは、単なる思い付きというところですが、もともとは、別のアイデアで現代にいる彼女の心的世界という話を考えたことが残っているのかもしれません。ちなみにその時の彼女の名前は、バーバラ・スタンウィックとなる筈でした(笑)
余談はともかく、バーバラの方は、パーティとして旅を続ける中で、「記憶」を取り戻していくという設定です。しかし、必ずしも思い出すわけではなく、また思い出せる範囲も回によって違います。バーバラにとっても四天王との出会い(特にタイニィフェザー)は、覚醒のきっかけとして働きます。だから、ナイトハルトがスカーブ山への登頂をパーティに薦めるというのも、ここでは別の意味を持って解釈されるわけです。
ナイトハルトとバーバラの間には、この記憶に関しての、同士的共感が生まれますが、立場が違う二人であり、それはお互い、秘められたままで終わっていくというのがというのが、一応の設定です。
…いかがでしたでしょうか。この物語は、若干どこかで聞いたような気がしないでもないですが、ともかく、もとのGameのストーリーよりは、少なくとも10倍は面白くなっていると思います(^^;;;
場面としては、今後こんなセリフ/場面が展開される予定でした(以後の「日記」自体は今適当に書いたんで、いい加減です)。
アクアマリンをナイトハルトに没収されたことで、ジャミルはカンカン。だから、そのまま、逃げてしまえば良かったんだとばかり言っている。そうは言っても、あれはもともとナイトハルトのものなんだから、仕方ないじゃないの。一方、アルベルトさんはしきりに恐縮しているけど、別に責任を感じるようなことじゃないと思う。
それより、あたしと姉さんの間では、ナイトハルトの態度の方が、話題になった。あたしには、よく分からなかったんだけど、姉さんによると、何でもバーバラさんの方をしきりに気にしていたようだ、というの。それも既に知っている人を見るような目付きで。バーバラさんは、ナイトハルトに前に会ったことなど無いっていうし、謎は深まるばかり。姉さんは、あいつ単に好き者なんじゃない、とか無責任なことを言うし… ともあれ、その謎のナイトハルトの言うとおり、スカーブ山に行ってみようと言うのが、あたしたちの今回の結論。ジャミルじゃないけど、少しは元を取らないとね。
今度はあたしにも、バーバラさんとナイトハルトの間の奇妙な空気が分かったわ。ナイトハルトが、バーバラさんに向かって「ようやく思い出したか」と言うと「あいにくとね」とバーバラさんは答えた。「何回踊り子をやっても、ステップは上手くならないようだな」と更に謎めいたことを言うナイトハルトに対し、「違うのが分からないの。毎回、座っているだけの人には同じに見えるみたいだけどね」と切り返すバーバラさん。ナイトハルトは黙ってしまったわ。
バーバラさんに、その後でなんのことか聞いたんだけど、ダンスのステップの話だと言われただけ。でも前には会ったこと無かったんじゃ… バーバラさんはスカーブ山であの巨鳥に会ってから、何だか変わってしまった気がする。どうしたんだろう、一体。
そういえば、アイシャの「兄さん」について、説明をしていませんでした。勿論、ゲーム上に「兄さん」など登場しません(^^; では、なぜそんな設定を付け加えたかというと、アイシャが日記を付けて自分の行動を振り返ろうとする動機が必要だと感じたからです。…結果、うまくいっているかはどうかはともかく。で、兄さんについての裏設定とは凡そ、次の通りでした。
「アイシャの兄というのは、アイシャより約3才年上。幼い頃より、全てにおいて秀でていたその少年は、部族を率いる優秀な族長になるのだと当然思われていた。アイシャにとっても、いつも目標となる存在だったのは言うまでもない。
しかし、15〜16歳(アイシャの今の歳)に、イニシエーションとしての祭礼のため、村の西方のストーンサークルへ向かった彼はあろうことか、祭礼の途中で、その姿を消し、この世界に戻ってくることは無かった。それは村としても大きな損失だったが、アイシャにとっては更に大きな悲しみだった。しかし、アイシャは悲嘆にくれる時期が過ぎると、兄さんの代わりに自分が将来、村を率いて行かなくてはいけないと自覚するようになる。
あの日、兄さんはアイシャに、自分に何か有ったら、村の皆を頼むと言付けていったことを思い出したのだ。」
明日は、吟遊詩人の言う通り、祭壇から最後の試練とかいうものに挑戦するのだという。その晩のあたしは、なかなか寝付かれなかった。星明かりを背景に、幾つも立てられた巨石がぼうっと浮かんで見える。焚き火がたまにはぜる他は、誰もが無言で火を見つめていた。
あそこは、兄さんが、どこかへ旅立ってしまった場所。もしかしたら、兄さんのいるところに行けるのだろうか。いや、そんな筈はない。明日、目指すのは、サルーインを倒すために必要な武器を得るための戦いの場所。兄さんは…きっともっと神様に近いところに行ったのに違いない。
あたしが兄さんのことを考えて眠れずにいる間に、他の皆は寝てしまったらしい。そう思っていたら、少し向こうに移動したらしいバーバラさんとホークさんの二人が話している声が漏れ聞こえてきた。バーバラさんの長い話にホークさんの時折、聞き返す声。だけど、あたしは兄さんのことでまだ頭が一杯で、二人が何を話しているかは全然聞いていなかった。そう、その時のあたしは、まだこの世界のことを全然分かっていなかったの。
サルーインは、あたし達を哀れむような調子で語り掛けてきた。
「いつまで繰り返せば気が済むのかね。何度やっても同じことだというのに。ここで負けを認めることだけが、下らん運命からおまえ達を救うことなのだぞ。」
あたし達は言い返した。「何度でも繰り返すわ。あんたを倒すまでね。それが、あたし達が、今回も決めたことなんだから。」
「…止むを得んな。今度こそ、おまえ達の運命を断ち切ってやるとしようか。」
「それはこっちの言葉だって。てめえの魔力ももう限界じゃないのか?」
あたし達は、奴に勝った。本当に勝てるとは思っていなかったのだけど、でもあの時のあたしは、いつもとどこか違った。やはり、兄さんの魂が乗り移っていたのかもしれない。そして、何よりも皆の力があれほど一致したからこそ、勝つことが出来たのだと思う。
世界は、少しずつだけど、落ち着きを取り戻しつつある。途中で別れてしまったアルベルトさんも王国の再建に乗り出していると聞くし、あたしもステップに戻るという人たちと共に、タラールの村を作り直す準備をしている。ジャミルも手伝ってくれているの。
だけど、これで本当に終わったのかどうかは、残念ながらまだ分からないらしい。バーバラさんによると、いつも巻き戻されるのは、戦いのすぐ後ではなくて、しばらくそのまま時間が進んでかららしいの。それがいつなのかは、バーバラさんにも分からないみたい。でも、段々その時期が遅くなっているような気もするとは言うんだけど。
だから、これでもう時は戻ることが無くなったのか、それともまた繰り返すのかは、神のみぞ知ることなの。
ただ、もし、あたし達が別のパーティで戦いに巻き込まれることになったとしたら、もちろん、また戦いを選ぶに違いない。それは、そういう運命だから、ではないわ。今回も、あたし達が自分で決めたこと。きっと今までもそうだったんだろうし、ジャミル達、「仲間」と一緒でさえ有れば、これからがもしあったとしても、同じだと思う。
でも、やはり本当は、これで終わりであって欲しいわ。静かな毎日、退屈であっても昨日と変わらぬ今日が訪れ、そして過ぎていくそんな日々が続いていって欲しい。
兄さん、あたしは兄さんが守ろうとした世界を守ることが出来たのかしら。いつまでたってもあたしは兄さんのようにはなれない。でも、それでもあたしには仲間がいる。だから、平気よ、兄さん。
(End)
というところです。(ラストはもう少し、格好良く決めたいという気もしますけど(^^;)、いかがでしたでしょうか。既存の物語を読み替えるという点で、このゲームに関しては非常に楽しませて頂いたという気がします。同人誌とか作っている人はこういう楽しさを求めているのかなと思ったりもします。今回の話については、すごく昔の話&全然完結していない、という、人様にお話しできるような代物ではないんですけど、このネタが私的には重要だったので、あえて書かせて頂きました。
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