日程へ
朝。土曜の6時台のバスは30分に1本しか無いため、余裕を持って家を出たつもりが、バス停に着いたのは、バスが来る1分前。実は私って結構、ぎりぎりの人生を送っているような…
今回は午前中の便なので、平日と同じ7時前の電車に乗り、平日と同じく品川で乗り換え。 NEX(成田エクスプレス)に乗るなら、もっと家の近くから乗れば良いのだが、定期券が無くなるところから乗る方が安い、という計算から。NEXは意外にも混んでいて、東京駅で満員に。朝早いせいか、やけに眠い。寝ていると、すぐに着く。
成田空港。フロアの配置が前と違うので、いつのまにか改装したんだ、と納得(していたが、実は利用するターミナル自体が前と違っていたことに後で気付く)。ユニクロとか入っているのも、改装した結果だと思い込んでいた。ちなみに、ユニクロは土産物として、浴衣を大プッシュ中。なるほど、分からなくもない。
BA(英国航空)のカウンターでチェックイン。お客様については (購入したエコノミーから)一段階上のワールド・トラベラー・プラスに変更させて頂きます、との申し出有り。おおっ、これが世に聞くオーバーブッキングによるアップグレード?
さすがにちょっと得した(具体的に言うと、片道の差額5万円程)気分になるが、通路側で予約していたのが、中側の席になったのは微妙。
ヒースローまでの航空券と、ヒースロー・エディンバラ間の航空券を渡される。荷物はエディンバラでの受取で、ヒースローでの再チェックインも不要とのこと。
さて、「はじめてのプラス」の感想だが。ええと…、余り変わらない?(^^;;
確かに、足は伸ばせる。フットレストとかも付いているし。ハイウェイバスみたいな感じで。あとヘッドレストも(何の意味が有るのかは不明だが)上下に動かせた。首の凄く長い人 ?には良さそう。しかし、例えば次回、往復10万払うほどの価値が有るかというと…
それより、異常に寒いのには参った。プラスの区画がエコノミーより狭い分、強く冷えるような。
チキンマカロニの食事と紅茶で少し体が温まったのを幸い、あとの時間は寝て過ごす。基本的に、行きの飛行機では映画(「コンスタンティン」 だった)を観たり、ゲームをしたりするより、気力?温存のため、ひたすら寝ることにしている私。
到着前に軽食。サンドイッチに挟んでいたハムがイギリス風?の塩辛いハムで、お腹が空いたのか意外に美味しかった。
ヒースロー空港。入国審査の女性に根掘り葉掘りとしつこく聞かれる。職業。金は幾ら持っているのか。何日間で、どこに泊まるのか。最初の質問がよく聞き取れなかったのが後を引いているらしい。あるいは、1人で入国というのが怪しげなのか。
ようやく解放されて、国内線の乗り換えターミナルへ。5番と表示が出ているのが離陸予定は1時間以上先。暇なので、5番の待合い席で、本を読む。
5番といっても昇降口は幾つも有るのだが、「5番」以上の表示が出ないので不安。時間になって出来た列に並んでそのまま乗り込むが、エディンバラ行きかどうか今一つ自信が無く、不安な時を過ごす。
1時間半後、飛行機が海の横にある都市を横切り、エディンバラの地理と合っているのを見るまで、不安だった。正確には、着陸後、空港の管制塔に「EDINBURGH」の 表示が出ているのを窓から見て、初めて安心出来た。
エディンバラ空港。日本の小さな地方空港並に、こじんまりとした空港だった。荷物の受取所でバッグが出てくるのを待つ。5番と6番が外国人用ということで、 そこで待っていたが、5、6番の分だけかなり待たされた(ような?)。両替所は閉まっていた(6時まで)が、ATMは有ったので助かった。バスに乗って駅へ。 この時間に団体以外で来るのはそう多くないのか、バスには数人。初めての土地でバスに乗った時は、車窓の風景が全て新鮮でわくわくする。町を通る度にpubが目に入るので、英国に来ているんだと思う。
市の中央、ウェイヴァリー駅に到着。線路を横断する橋の上で降ろされる。 スコットランドの首都というより、のどかな地方都市という雰囲気で、危険な雰囲気は殆ど無いので、ほっとする。ホテルはニュータウン側の少し離れたところに有るので、荷物を引き吊りながら、道をずるずると降りていく。前を日本人のカップルが歩いている。
10分ほどでHotel Cairnに到着。前払いを要求されて、え?と思う。 いや、いつ払っても別に良いのだけど、予約時にクレジットカードの番号は伝えているわけだしな。改装中なのか、廊下に色々資材が置かれてい て、余り営業中ではないような雰囲気。部屋はまぁ、エコノミーな感じ。
明日は朝から、netで予約しておいた現地のバスツアーでハイランド地方を一日周遊の予定。朝8時15分の出発なので、遅れないよう、今日の内に、バスターミナル(セントラル・バスステーション)を探しておくことに。印刷したヴァウチャーに地図は有ったのだけど、ニュータウンの町並みを歩いて、かなり迷う。 方向感覚が間違っていたらしい。散歩中の老夫婦から、Can I help you?と呼び掛けられる。 こういう時は見ず知らずの人の親切が身にしみる。分かってみれば、バスターミナルはそう遠くなかった(元からそういう場所にあるhotelにしたわけだし)。
安心したので、そのまま駅へ。鉄道の切符も今回は全てnetで購入したので、駅の発券機で切符を予め発券しておく必要が有るのだけど、あろうことか、券売機 のある部屋への入り口が既にシャッターで閉鎖されていた。まぁ良いや、明日で。
ついでに、そのままロイヤルマイルへ足を伸ばしてみる。 夜の9時半を過ぎて日が沈み(7月の英国では今頃が日没時刻)、スコットのモニュメントも夕焼けに聳えている。ロイヤルマイルではまだまだ観光客が徘徊していたが、こちらは明日に備えて大人しく宿に戻ることにする。
駅の売店で水と明日の食事(スコッチエッグ、ミートパイ…)を買う。 ホテルの朝食はフルブレックファーストということで期待していたのだが、日曜の朝は8時半からとのことで、それではバスに間に合わないので自前で調達することに。スコッチエッグは、売っていたのが意外だったので。地名付き料理の例に漏れず、スコットランド以外だけで存在する料理だと思っていた。でも、駅の売店だから観光客向けの商品なのかも。
帰りの道でテイクアウトのピザ(っぽいもの)を買い、宿で食べる。 宿に持ってくるまでに何だか冷めてしまう。もはや、だるいが、一泊目なので来ていた服を洗濯(しておかないと着られる服が減るので)。シャワーを浴びるが、ぬるい。 明日に備えて、23時半には寝る。
お湯を沸かそうと、電熱器のポットを手に取ったら、前の人の使い残しが入っていた。うわ、ちゃんと掃除しているの、この部屋?
まだ4時半なのに、一度目が覚めた。…時差ボケ?
トイレのレバーを捻ったら、レバーの紐が抜ける。何だ、このホテル…? 何故、こんな朝早くから、異国の地で、トイレの水回りの修理をしなくちゃいけないんだ?と頭の中でぼやきながら、貯水槽の蓋を開けて、中の紐を掛け直す。
7時前に起きる。朝食は昨晩買ったスコッチエッグやチーズ&ハムのパイとミートパイ。ミートパイの袋の裏を見ると、ドーナッツ程度の大きさなのに570Kcalも有るのにショックを受ける。しかも、まずいので半分残す。
8時前に(昨日探しておいた)バスターミナルへ到着。乗客は意外に集まっていた。外国人が多いようで (首都エディンバラを出発してハイランド地方を周遊するというコースの性格上、地元の人が今更乗ったりしないのは当たり前だが)、中国系の家族とかが目立つ。
目的のグレンコーの辺りは道の左側がビューポイントと判断し、左側に座る。出発時間の8時15分の5分前には皆乗り込んでいたが、来ていない客がいたらしく20分頃まで待つ。結局、現れなかったので、そのまま出発。
ガイドのおじさんは、小柄で赤ら顔に口髭、丸いお腹に民族衣装のキルトスカートをまとい、あの大きながま口みたいなバッグを肩から掛けている。バスが動き始めてから、ずっと喋っているのだが、真面目なのか、そういうスタイルがここでは普通なのか。
発音自体は分かるものの、頭の処理速度が付いていかず、全然理解出来ない私。話している 内容(その場所で起きた出来事らしい)自体、元々知らないわけで、二重に片言しか分からない。という状態で、言葉が絶えず聞こえてくるのを否応なしに聴いているのは結構、疲れるものだと分かった。
ところで、おじさんがoftenをオフテンと発音しているのにはびっくりした。スコットランド訛りというか、元々は文字通りに発音していたのか。
バスは冷房が効いていてやや寒いのでレインコートを着る。10時過ぎに、ドライブインのようなところで小休憩。無理に食べて来なくも、ここで朝食にすれば良かったのか。 とりあえず暖まろうとカフェラテを頼む。駐車場の前には、既に緑の丘陵地帯が広がっている。
ここからは山道。 日本で言えば信州みたいな風景。上がるに連れて、段々とダイナミックな風景になっていく。
いよいよ、ハイライトであるグレンコーへ。スリーシスターズと呼ばれる切り立った山々の下で一旦バスを降り、写真撮影のための小休憩。さすがに絶景である。スコットランドといえば、ハイランド地方のこの風景をぜひ 一度見たかっただけに、来ることが出来て非常に嬉しい。
少し離れたところにあるビジターセンターでまたバスを下車。ここのカフェで昼食を取れ、ということらしい。まずは、中の展示を見学。山の成り立ち(氷河が削って…)とか、対イングランドとの戦い の歴史とか、近代の自然保護活動の始まりとか。ボタンで押す音声ガイドの中に日本語の説明も有ったのには驚いた。その後、カフェ。キャロットケーキとサンドイッチを買い、紅茶を飲む。
出発したバスは、ここでは一番、街らしいフォート・ウィリアムを抜け、更に北部へ。スコットランド最高峰のベン・ネヴィスが見えるのでは?と期待したが、曇りがちの天気のせいか、もとより街道からでは無理なのか、車窓からでは どれがそうなのか判断出来なかった。
この辺ではガイドは運河のことをずっと喋っていた。よほど重要な運河だったんだろうか(よく分かってない)。途中の橋で、船のための信号機が有り、ボート (レース中だった)が通過するのを暫く待つ。
ネス湖へ。縦に非常に細長い湖なのだが、しまった、湖がずっと右側だよ… 地図を見て最初に気付くべきだった。
アーカート城で下車。英国ツアーのパンフでよく写真を見掛ける場所だが、確かに、まさに観光地という光景。最初にビジターセンターみたいなところで、アーカート城の歴史に関する短編映画を見せられる。英語のナレーションより、文字から意味を想像するドイツ語字幕の方がまだしも分かり易い。私のヒアリング能力って…
アーカート城が廃墟なのは、イングランド軍に放火されたからではなく、劣勢のジャコバイトが自ら火を放って城を捨てた、というのが事実らしい(映像とドイツ語字幕から推測するに)。
45分くらい自由時間があったので、湖を見下ろす城跡を端から端まで歩き回る。縦に広い湖面を眺めていて、どうもネッシーはここにはいそうにない感じだなと思う。霧が出ていたりすると、雰囲気がまた違うのかもしれないが。そういえば、ビジターセンター?にはネッシー関連の土産物は一切無かった。他にネス湖のビジターセンターとか、ネッシー何とかという観光施設も別の場所に有ったりするようなので、この場所ではネッシー物は売らない (売れない)取り決めになっているのかも。
バスはネス湖と別れ、インヴァネスへ。 鉄道駅前の広場に停車。ここで下車する人とここから乗り込む人がそれぞれ数人。ここまで来たんだと思う(バスの中だけど)。海(北海)はバスからは見えないが、カモメが飛んでいて、港町であることを実感する。
帰路は、行きの山道よりは平坦な、丘陵の中の一本道。ピットロッホリーというところで休憩。……! ここって、漱石が暫く滞在した小さな保養地じゃなかったっけ? サーモンが名物ですよ、と一軒のレストランに案内されるが、6時台というと夕食にはまだ早い感じ(何せ日没は9時半)なので、店を出て街を散策 する。いかにも、観光地というこじんまりとした可愛らしい町並み。すこし暑いので、アイスを買ってみる。ミント・チョコ。イギリス人は大好きらしいが、…これってやっぱり歯磨きの味だよー。
小さな鉄道駅を眺めたり(漱石の時代なら鉄道でこの町に来た筈)と時間を潰してからバスに戻ってきたら、既に全員が席に座って私を待っていた。…え? 集合時刻のまだ5分前なのに、何故 何故?
フォース湾を横切る長い橋を渡り、エディンバラに8時過ぎに到着。
まずは駅の自動券売機で、ネットで購入していた明日以降のチケットを発券。問題なく出てきたのでほっとする。
無事、明日の移動手段も確保されたので、カールトン・ヒルに登って夕日に照らされた街並みを見ることにする。丘の道を上っていると、少し前を歩いていた中国系の女の子二人から、いきなりリプトンティーの瓶を手渡される。…? 蓋を開けて欲しいということ らしいので、開けてあげる。別に固いというほどの蓋ではなかった。
丘の上から街並みを眺めた後、ホテルの有る北側の道を下る。
とりあえず、喉を潤すか… 駅とホテルの間にコナン・ドイルという名前のパブが有って、そういえば、コナン・ドイルって作家になる前は確かエディンバラで医者をやっていたんじゃなかったっけ?と思い出 す。この辺がゆかりの地なのかも。とそのパブにも入ってみたかったのだが、ギネス が飲みたい気分で(そのパブにも有るとは思ったのだけど)、ギネスと看板が掛けてあるパブがその前に目に入ったので、入って注文する。
ギネスは何回かに分けて注ぎ、最後にグラス一杯にするのが正しいやり方らしいのだが、ここでは最後、注ぎ続けて、そのまま零してグラス一杯にしていた。ちょっと乱暴、というか大雑把過ぎだよ(^^;;
昨日はピザもどきだったので、今日はちゃんとピザ屋のピザをテイクアウト。量が多い。
帰って部屋で、漱石の「永日小品」(←文庫本を持ってきていた)から「昔」の章を読む。なるほど。(参考:青空文庫の「永日小品」)
朝。break fastという板が書かれた部屋を覗いてみたが電気も付いていない… と思ったら、全然違う場所を食堂として使っていた。 分かるか、そんなの。色々と問題の多いhotelだったが、朝食はたっぷり量が有るフル・ブレックファーストで、これを食べれば、値段の割には…となるのかも。
もっとも、昨日みたいに食べられないのではしょうがないけど。ちなみに、前日中に予め言えば、朝食の提供時間前でもcold meal、要するにパンとお茶位なら出すと食堂には書いてあったけど、それなら自分で買ってきた方がマシ。
9時前にチェックアウト。と言っても、前払い済みなので鍵を返すだけ。荷物を預かって欲しいとフロントに頼むと肯いたが、目の前の廊下にそのまま置くだけだった…
再び目の前のカールトン・ヒルに北から上って、日の光の下で市内を見下ろしてから、線路の下を抜けてオールド・タウンの東側、ホリルード宮殿の前へ。 ダイアナ・ウィン・ジョーンズのデイルマーク史の最終巻「時の彼方の王冠」を読み終えてから、まだ日も浅かったので、ここがあのタンノレス宮殿の(場所的な)モデルか!と感慨を覚える。
といっても、ここまで来たのは、ロイヤル・マイルを端から端まで歩いてみようと思ったからで、宮殿自体には用がなかったのだが(入る時間もないし)、ちょうど開館時間の9時半にたどり着いたので、横のクイーンズ・ギャラリーだけは ちょろっと覗いてみることに。
受付で、ギャラリーだけというとひどく驚かれる。まぁ、普通は宮殿を見るついでに訪れる場所で、ここだけ入るという人はいないんだろうな。一言で言えば、女王が収集した現代の水彩画ギャラリー。普段、水彩画を見る機会は余り無いのでどの位の質の作品なのかよく分からなかったが、ロヤルファミリーを描いた作品の部屋では、あの女王陛下に おかせられましても、かつては可憐で愛らしいプリンセスだった時代が有ったのだ!という驚愕の真実を発見する。
ロイヤルマイルの坂道を東からゆっくりと上がる。蒸し暑い… 沿道の店で水とコーラを買い、一息でコーラを飲み干して、ようやく息をつく。
一旦、ロイヤルマイルから離れて、スコットランド国立美術館(ナショナル・ギャラリー)まで下りる。10時半に到着。
エディンバラ市内を観光できるのは今日の午前中だけで、この後、エディンバラ城にも入ることを考えると、滞在可能時間は1時間のみ、と逆算し、やや慌ただしく回る。広い壁に掛けられるだけ掛けた 、昔の屋敷風の展示方法で、どこに誰の絵が有るのか、非常に分かりにくい。
とある小部屋の入り口の裏側に、ヴェラスケスの農民を描いたリアリズムの絵を見つけた時は我ながら凄い、と思ったが、フェルメールの初期の絵は(展示されていたとしても)気付ず。
地下にスコットランド絵画の特集展示室が。全体的に地味めのような… この国では絵と言えば、肖像画がメインらしい。ここの他にも国立肖像画美術館がある位だし。
上の階の方に印象派のコレクションが(割と唐突に)有って、しかも結構優れたコレクションだった。その部屋の監視員の人がどう見ても日本人女性に見えたが、なぜここに? エディンバラで美術を学んでいる人だったんだろうか。
ルネサンスも意外と充実していて、ラファエロが有ったり、やけに艶めかしいテッツィアーノが何点も有ったりと(エッチなのはいけないと思います)。わたし的には、ボッティチェリのロマンティックな絵画がここでのベストで、その前でだけは暫く立ち止まって眺めていた。
外の公園に出ると、日差しが暑くてたまらない。が、街の人たちには貴重な日光なのか、芝生やベンチの上で、皆、ひなたぼっこしている。
西側からぐるっと回り込むようにして城の入り口まで上がる。 さすがに、エディンバラ第一の観光地だけあって、切符売り場には行列が。並んでいる時に手荷物検査も有った。暫く並んだこの広場は来月はミリタリータトゥーの舞台となる場所らしく、両側に観客席 用のスタンドを既に造営中。写真で見た時の印象だともっと巨大なスタジアムみたいなところでやるのかと思っていただけに、ちょっと意外。
とりあえず、クラウンスクエアからクラウンルーム見学の入り口に入る。王冠、王勺、王剣の3つのhonorが展示されているという表示に、三種の神器という言葉を思い出す。確か、冷蔵庫とテレビと洗濯機、 でしたっけ…? 生まれてもいない頃のことなんでよく分かりませんが。
honorにはイングランドとスコットランド連合後、隠されて行方が分からなくなっていたのをウォルター・スコットが再び発見した、みたいなスコットランド国民の苦難の歴史があるらしく、その様を人形付きセットで絵解きしていた。
そうそう、ここで見たかったのは、即位式に使う「運命の石」。イングランドが1296年にスコットランドから持ち去って以来、長年ウエストミンスター寺院に置かれていたものを、つい最近(1996年)、700年振りに、スコットランドにようやく返却したという、有名なあれ。
それがこれか!というわけで、しげしげとよく見たのだけど、ええと、要は石じゃん… いや、当たり前なんだけど、普通の石に見えるというか。持ち手の金具とか平気で打ち込んであるし。 あれって持ち去る時に打ち込んだのかな?
城を出て少しロイヤルマイルを下り、作家博物館へ。 好事家しか訪れないのか、すごくひっそりとしていた。スコット、バーンズ、スティーブンソンの3人を主に取り上げている博物館なのだけど、私の関心はスティーブンソンのフロア。南国での写真の数々を見ていると、中島敦の作品に描かれている通りの、誠実で親しみやすい人だったようで嬉しくなる。現地の遺品も幾つか(木の枕とか )並べてられていて、興味深く眺める。
博物館の前の小さい広場にはスコットランドの作家の言葉が幾つか書かれていて、その中に、Naomi何とかという作家の言葉があった。もしかしたら、日系の作家なんだろうか。
時間は既に12時半。残り時間は殆ど無いが、スコットランド博物館へ足を伸ばしてみる。本当は全部見て回りたいところだけど、石器時代のフロアーだけ、わずか5分 !ほどでざっと見る。ガラスケースの中に人型を入れて、そこに宝飾品を飾る等、斬新なディスプレイだった。
12時50分。慌ててホテルまで戻る。13時半。思ったより時間が掛かる。廊下に起きっぱなしだった荷物を回収して外へ。蒸し暑い。日に焼ける。 しかし、荷物を引き上げながら駅まで上る。もう汗だく。
14時15分。構内の店で、ツナのパンを買ってベンチで食べる。乗るはずの電車の表示が出ないが、発車時刻14時52分の5分前になって、そろそろと思い、とにかく中に入ろうとすると、自動改札を 昨日発券した切符が通らない。駅員に見せると、何とホームが違うとのこと! 指された先は歩道橋を渡った向こう側。慌てて走り、歩道橋を荷物を抱えて掛け上がり、何とかそのホームまで辿り着く。
…と? 人が溢れているが、電車の来る気配がない。他の電車(ロンドン行き)等が先に来ては先に去っていく。どうやら乗るべき電車の方向だけ遅れているらしい。
乗るべき電車がやって来たのは予定時刻より23分も後だった。やっと乗り込む。しばらく順調に走っていたが、30分もしない内に、また止まる。車窓には牛と羊がのんびりと草を食んでいるスコットランドの田園風景。日差しは 非常に強い。電車はちっとも動かない。牛と羊は相変わらず草を食んでいる…
30分以上そのまま止まっていたが、動き出したのでほっとする。のもつかの間、その後もしばしば減速したり、長いこと止まったりの繰り返し。結局、今日の目的地windermereへの乗換駅oxenholmに辿り着いたのは、19時15分。到着予定時刻16時51分を既に3時間以上も超えていた…
というか、エディンバラからoxenholmまでは元々2時間しか掛からない筈だったのだから、それよりも、止まっていた時間の方が長いということ?
oxenholmは2本のホームしかない田舎の駅。乗ってきた電車が行ってしまうと何も無い。周りには草原の緑しか見えない、屋根もないホームの上で呆然と待っていると19時40分過ぎにwindermere方面から ローカル電車がやって来たので、やれやれと乗り込む。
が、20時半になっても、まだ発車をしない。車掌は時折、アナウンスしているが、聞き取れるのは毎回繰り返す冒頭の「we apologize…」まで。弁解するのは良いけど、何が原因で、しかも復旧見込みがどうなっているのか皆目分からず。JRのような車内の電光掲示板や、TV画面での文字情報が有れば…と思う。 あとoxenholmまで2,30分のところまで来ているというのに…
どうしようも無いので、そのまま座って待っていると、車内を歩いてきた男の人に行き先を訊かれる。windermereと答えると、タクシーに乗り合いで行かないか?と訊かれる(多分)。勿論、渡りに船なので、荷物を持って付いていく。
駅の外には既にタクシーが。同じようにして声を掛けたらしい2人と運転手で計5人。 皆に声を掛けた(地元の)男の人が助手席、残りの3人が後の席に座る。右が男性、真ん中が夏休みで実家に戻ってきた?女子大生、左が私。
21時を過ぎて日も暮れかけてきた空の下、羊しか見えないどこまでも緑の丘陵を横切る一車線の狭い農道を、人で一杯のタクシーは70キロ近いスピードですっ飛ば していく。 丘陵の勾配に沿って道が上下する度に、 車はガタンと跳ね上がり、私たちの体も宙に浮く。あるいはカーブを回るたびに、体が左右に押し付けられる。…どうか、向こう側から車が同じような猛スピードで走ってきませんように。
そんなわけで、「長閑な」とか、「ゆったりとした時間が流れる」といった、湖水地方について事前に思い浮かべていたイメージとは凡そかけ離れた、wild&toughな 乗車体験が、何故か、湖水地方の第一印象となったのだった。
隣の女子大生へは、windemere駅で待っている彼氏がやきもきしているらしく、度々電話が掛かってきた。で、その度に、今タクシーで向かっているところだから、仕方ないでしょ、といった感じの回答。
助手席の男の人は、運転手に近道?を何回も指示していたが、狭い脇道に入るところで2回続けて間違い、その度に袋小路に入り込む。2回目は狭い道に入りすぎて反転も出来ず、バックのまま その狭い道を100mほど戻る羽目に。
というわけで、3回目に脇道に入るよう言った時は、運転手のお兄ちゃんも「Sure?」 とさすがに念を押していた。男の人も「Sure」と答えつつ苦笑していたが、運転手もすかさず「fifty fifty」と言って後列の私たちに目配せをしたのが、おかしかった。結果的には3回目は正しくて、広い道に出てきた。
近道をしたかいが有ったのか、21時30分にwindemere駅前の広場に到着する。一人5Euroを払って解散。その値段が安かったのかはよく分からないが(高くはないと思う)、駅舎では来ない電車 を待っている人達が座り込んでいたから、少なくとも時間的には正しかったんだろうなと思う。
荷物を引きずりつつ、Broad.St.まで下る。今日の宿Broadlands Guest Houseに着いたのは、既に日没後の21時45分。
ドアには鍵が掛かっていたので、ブザーを鳴らして開けて貰う。
出てきたおかみさんに、遅くなってすみません、と言うと、大丈夫、と言われる。キー(室内&宿のドア)を貰い、2Fの部屋に案内されて、ほっとしているとノックの音。さきほどのおかみさんが、オレンジジュースを入れたグラスを差し 入れてくれた。有り難く頂いたが、宿に着いた時、よほど焦燥し切った表情をしていたのだろうか、私。
荷物を置いて町並みの様子を見に出掛ける。観光地の小さな町並みで、この時間(22時過ぎ)だと、レストランももう終わり。まぁ、今日は食べる(店を探す)のも面倒だし、そのまま寝 てしまおうかと、宿に戻る。
シャワーを浴びてさっぱりしてから、お湯を沸かして紅茶を入れる。ちゃんとミニサイズの(コーヒーフレッシュのような)牛乳が置いてあった。機内食で余ったビスケットを手提げバッグに入れたままにしていたことを思い出し、出してみたら、粉々になっていた。でも食べた。
改めて見ると、日本で言えばペンションのように小綺麗な部屋だった。トイレもロイヤルドルトン製 と食器並みで、エディンバラのホテルとの余りの違いに、おかしくなってしまった。
それにしても。長い一日だった、と思った。