マドリード旅行の予習月間

2016.8.1


 6月の風邪によるキャンセルで出来た(涙)、旅行までの一ヶ月を有効に活かそうと、予習に取り組んだ今回のマドリード月間 。こうして並べてみると、結構、予習できたと言えるかも。まぁ大体、画集なんですが。しかも、ほぼ「もっと知りたい」とタッシェンの2択。 ちなみにタッシェン・ジャパンは日本撤退していて、本屋の在庫しかないらしいというのを、今知ってちょっとショック。お世話になっていたのに。まぁ、でもブリューゲルくらいしか買ってなかったけど…

 そうそう、今回のマドリード月間はボス関係で数冊買ったのを除けば、基本的に地元の図書館で借りたもの。意外と充実していて驚く。元々、このマドリード月間はプラド美術館を予習しないと、ということから来ているので、最初に借りたのが岩波の「プラド美術館」だったのだが、この大型本が貸出可だということに まず驚いた。そして、返す時はみすず書房のと一緒に鞄に入れ、バスに乗って(とても歩けないので)返しに行ったのだが、余りに重くて2冊まとめたのを後悔した(^^;;

 ところで、今回一番時間が掛かったのは何と言っても堀田善衞の「ゴヤ」。

 学生時代、スペインを一ヶ月旅行した時のいわば精神的支柱が、堀田善衞の晩年のスペインエッセー(滞在記)だったのだが、当時はこのゴヤを読んだことは無かった。社会人になって以降、特に今の職場になるまでは、長文の文章を読むような余裕はとても無かったというのが、まず第一だったし、読む機会も無かった。勿論、堀田氏が例えば、3ヶ月掛けてアルバ公爵家に知遇を得て、その所蔵の1枚の絵を見たとか、その取材の徹底ぶりは知っていたのだが、その後、ゴヤに対する世間の研究の進展(「巨人」はゴヤ本人の作ではないとなった等)も有り、20世紀の知識で絵を見て書いた、当時の知識人の文章が、今現在どれだけ有効なのか、と正直、疑問に思っていたというのもあった。

 とはいえ、プラドへ再び行くのであれば、この機会に読んでおくべきかと、図書館で借りてきた。全集だと2冊だけど、実際は4冊分。2段組の全集仕様で500P冊が2冊で、2週間、毎日帰りの電車で読んでいたのだが、持ち運びがとにかく重くて、それが一番辛かった(^^;;

 しかし、結論としては、読んでよかった。こういう知識人による評論とか伝記的な文章は今の時代、全然流行らないと思うが、今でも読む価値のある、しかも読みやすい評伝だった。司馬遼太郎の偉そうな口調と違って、堀田善衞の立ち位置は信用出来る、という印象。だから、見ていた絵が多少、本人でなくなっていようが、全く問題のない強度の文章だった。ゴヤを神格化するのでも、面白く伝説化するのでもなく、 可能な限り誠実にその後を追い掛けていく。

 特にナポレオン侵攻後のスペインの状況について、ここまで乾いて冷静にその愚かさを伝えられるとは思っていなかった。ともすれば、ナポレオン軍に対するスペイン民衆の蜂起等、英雄的に言われるような話だが、実際は全くそうではなかったことを、初めて知った。その上でゴヤの「5月2日」「5月3日」を見ると、色々と複雑な心境になる。しかし、あの絵はよく出来ている。このゴヤ像を見たことで、やはりプラドや他でのゴヤを、きちんと見ることが出来た、そう思う。