Scene 45 「Pの悲劇」 〜素直に味わいたい、この巧さ〜

 

いつからだろう、高橋留美子の新刊を本屋で探さなくなったのは。恐らく、もう2年以上もまえのことだ。だが、実際にはもっと前からそうなっていたとも云える。

10代の僕にとって(そして同世代のファンの多くにとって)、「るーみっく・わーるど」程影響を与えてくれたものは無い。しかし、脱落していった多くの仲間?と同じようにいつしか僕も「らんま1/2」の途中で放り投げ、疎遠になっていた。余りにも同じことの繰り返し、ひたすらハシャギ続けるキャラクター達。確かにそれは「うる星」と同じとも云える。付いていけなくなったのは僕たちが変わったせいかもしれない。

しかし、「うる星」の低年齢版ではなく、90年代の新しい少年マンガを彼女には期待していたのだ。かつての「うる星」が80年代のそれであったように。とはいえ、それを生み出すのは彼女ではなく「うる星」の読者だった僕たちの世代によるのかもしれない。

では、高橋留美子はもう要らないかというと、全然そうではない、ということを再認識させてくれるのがこの短編集である。ビッグコミックオリジナルに掲載されたこれら全ては、「めぞん」と「うる星」の2大作品が終了してからのものである。つまり、その後の彼女の道程と、とりあえずの成果を示している訳だ。ここでの主人公はモラトリアムな学生ではなく、作者の年齢に近い、子供の小さな若い主婦である。そして描かれているのは、その日常に訪れる何らかの異変と、結果として得られるささやかなモラルなのである。

勿論、その世界の時代性の欠如を指摘することも出来るが、ここでは素直にその巧さを味わいたい。「るーみっく・わーるど」は作者の年と共にここまで広くなってきたのだ。

将来もし高年齢層を読者に、ビッグゴールドシルバーなどという雑誌が創刊されるとしたならば、巻頭作品は高橋留美子が飾るかもしれない。そう想像すると何だか早く年を取りたくすら成るではないか。彼女の時代はこれから、なのかもしれない。